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年次大会
大会報告:第38回大会 (報告要旨・報告概要:テーマ部会 II)

 テーマ部会 II 「ジェンダーと社会参加」
 6/23 14:00〜17:30 [5号館502教室]

司 会:直井 道子・森岡 清志
討論者:山田 昌弘・坂本 佳鶴恵

部会趣旨 直井 道子
第1報告: 育児ネットワークと育児サポートシステム 舩橋 惠子 (桜美林大学)
第2報告: 社会参加の一形態としての市民運動 高田 昭彦 (成蹊大学)
第3報告: 主婦の社会参加と生活変容
−<生活クラブ生協>の組合員調査から−
山嵜 哲哉 (早稲田大学)

報告概要 直井 道子 (東京学芸大学)
部会趣旨

直井 道子

 この部会では、市民運動、生協活動、(職業)など社会参加の多様な形態の中でジェンダーがどのような意味を持つかを考えていくことを企画した。女性に関する報告が主となるが、男性も視野に含めて議論したい。その材料として、(1)参加の多様な形態・・・職業以外にも地域活動、生協活動やその発展としての議員活動など。(2)参加動機とその発展・・・経済的要求、家族の安全、自己実現、社会改革 (3)参加の障害と障害を克服する手段・・・活動参加後の家族の態度変化、育児ネットワークなどに関する報告がなされる。具体的な事例を通じて、特に職業を通した社会参加とそれ以外の社会参加の相克、それぞれの意義と限界、その中でのジェンダーの意味などの議論が起こることを期待している。

第1報告

育児ネットワークと育児サポートシステム

舩橋 惠子 (桜美林大学)

 産育は、社会の視点からは公共的な人類再生産という側面を持ち、個人の視点からは私的なひとつの出来事・生活の組織化という側面を持つ。したがって、産育に関する諸問題の解決は、社会によって保障されなければならないのと同時に、個人の選択の自由にも任せられなければならないのである。このような一見矛盾に満ちた産育の諸問題を、その両方の側面からとらえ、公共性にも私事性にも還元しない第三の道として、個々の家庭を核にして育児を組織化する育児ネットワークの形成と、それを社会的に支える育児サポートシステムが考えられる。現代女性の社会参加の形の多様性(職業、地域、社会運動など)に見合って、それを可能にする育児ネットワークと育児サポートシステムのタイプも多様なはずである。

 当日の報告では、ヨーロッパ特にフランスの保育制度・育児保障制度・育児の実態を紹介しながら、日本の現状と絡めつつ、育児ネットワークと育児サポートシステムの諸類型、それらの発展の可能性・諸条件・困難な点などについて、具体的に検討したい。そして、現代における専門家の役割や育児関連産業の功罪についても、あわせて考えたい。

 キーワードは、「育児ジェンダー」「子育て縁」「精神的支え」「定常的保育と緊急保育」「育児文化」「慣らし保育」「育児保障」「受容的態度」などである。

第2報告

社会参加の一形態としての市民運動

高田 昭彦 (成蹊大学)

 「社会参加」とは1960年代に始まる「参加革命」の影響を比較的受けなかった社会層の社会的に意義を認められた活動への参入のことを指し、特に女性に関して言われることが多い。すなわち女性が家庭以外の生活領域、例えば地域、職業、政治、レジャーなどに活躍してくる現象を指している。そのどの領域に焦点を絞って分析するかは研究者の問題関心によるが、ここでは社会変革に通じる「社会参加」、具体的には草の根の市民運動への参加を問題にしたい。

 そのような市民運動には3つの特質が考えられる。すなわち実現を目指す基本的な価値の面においてはオルターナティヴ性、組織面ではネットワーク志向性、運動主体においては生活者というものである。それを今回は武蔵野市において具体的に見てみよう。

 武蔵野市の市民運動の中で上記の3特質を備えていると思われる運動の限定は、市内の中心的活動家7人へのインタビュー、および趣味とスポーツ団体を除く市内の市民運動団体への郵送調査の回答から判断した。そのうち調査可能な30団体を抽出しその中心的活動家にインタビューを行った。このデータから彼らの市民運動への参加を考察したい。具体的には参加(活動の開始)の動機、活動の目標、活動上の問題点、活動の発展=ネットワーク化、「繋がり」の特質、自己の内面の深化などを問題にする。ここには少数ながら男性の活動家も存在するので、男性の社会参加の条件についても合わせて考えていきたい。

第3報告

主婦の社会参加と生活変容
−<生活クラブ生協>の組合員調査から−

山嵜 哲哉 (早稲田大学)

 今日の日本社会の性別役割分業の実態を考慮に入れて、「ジェンダーと社会参加」というテーマを顧みるならば、おそらく、その希望的展望は「男性の家庭及び地域生活へのさらなる参加」と「女性の職業及び地域生活へのさらなる参加」という視点に定位することができよう。本報告では、この後者の文脈において、「女性の地域参加」、とりわけ、家庭に埋没しがちな専業主婦たちが私生活(家庭)を基盤としながら、地域社会のあり方を変革していった事例を、<生活クラブ生協>の活動に関する7回に渡る調査データをもとに検討してみたいと思う。

 同生協は、専業主婦層による生活資材の班別予約共同購入を母胎として、独自の地域ネットワークを形成し、過去20余年にわたって様々な地域活動を組織化してきた。そして現在、東京・神奈川・千葉の3都県において30余名の地方議員を組合員自身の<代理人>として送りだしている。

 報告では、同生協の特質と組合員の基本的属性を概観した後、「安全で品質の良い品物を求めて」同生協に加入した主婦たちが、地域社会に積極的に関わる主体へと生き方を変えていった過程を、生活変容の基本的パターン、疎外要因、今後の問題点と可能性といった観点から考察する。

報告概要

直井 道子 (東京学芸大学)

 生協活動や地域活動を、主婦としての生活に根ざした女性ならではの望ましい社会参加のかたちとみるか、夫に経済的に依存したままでの活動には限界があるとみるか、いづれにせよ、女性は女性なるがゆえに、男性は男性なるがゆえにとりやすい社会参加の特定の形があり、それぞれに意義と限界があるのではないか。この部会ではこの問題を具体的な材料をもとに議論することを意図した。

 報告で、舩橋恵子氏(桜美林大学)は女性の育児負担によって男女の不平等が再生産されていくことを「Childcare Gender」と名付けた。これを克服していく方策として、フランスの保育制度や保育の実態を例にあげつつ「産育」のコストを社会的費用として保障していく方向への発想の転換を求めた。

 山嵜哲哉氏(早稲田大学)の報告は、戦後日本における「私化」からの解放の契機とジェンダーとの関連を探ろうとした。そして、生活クラブ生協の数回に及ぶ調査から、「家族に安全な食物を」という主婦としての「私的な」関心が、活動の中で運動の理念を内面化し、社会改革としての意識に変化していく過程を報告した。

 会場での議論は、育児保障や生協活動によっても社会での性役割は変化していかないのではないか、という点に集中した。二つの発表は「私的」と俗に言われる営み(育児、家族に安全な食物を食べさせたいための共同購入)の中に実は私的価値を脱していく契機があり、そこにジェンダーの問題をとく鍵があることを示したが、またその限界を示したともいえよう。議論がそれ以上に発展しなかった一因は、男性の社会参加に触れる報告がとりやめになったことにもあろう。男性の社会参加の意義と限界に関する話題があれば、もう少しジェンダーの本質に迫る議論が展開されたかもしれない。

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