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年次大会
大会報告:第50回大会 (報告要旨・報告概要:自由報告 第8部会)

第8部会:地位達成と労働市場  6/2 10:30〜13:00 [社会学部A棟402教室]

司会:直井 道子 (東京学芸大学)
1. スウェーデン経済の現況
−産業と労働−
大北 秀明 (駒澤大学)
2. 不況下の労働市場における若年者の雇用問題
−フリーターという<自己実現>の隘路−
小渕 高志 (武蔵大学)
3. 地位達成における社会的資本の効果
−同類原理の検討
石田 光規 (東京都立大学)
4. 女性の大学教育・初職特性と結婚を通じた地位達成 嶋守 真由美
(シカゴ大学・東京大学社会科学研究所)

報告概要 直井 道子 (東京学芸大学)
第1報告

スウェーデン経済の現況
−産業と労働−

大北 秀明 (駒澤大学)

 スウェーデンは福祉国家として多くの国々が希望の島として見ている優等生国家である。しかし,スウェーデンは,福祉国家論としての研究が盛んだが,スウェーデン福祉国家の経済的基盤である産業と労働は明らかにされていない傾向にあると思われる。そこで,スウェーデンの経済的基盤である産業と労働の現況を報告する。その内容は,1990年代に入りスウェーデンは不況に突入したが,現在,スウェーデン経済は安定成長している。その概略を考察し,労働との関係を見ていく。とりわけ,スウェーデンは経済成長をしている一方,低下傾向にあるものの依然,比較的失業率は高い。そこで,産業構造のメカニズムを明らかにし,雇用状態との関連をみていく。現在,スウェーデン労働市場の現状は,1990年代以降の苦しい経済状況のなかで,新たなるスウェーデン・モデル,つまり新たな積極的労働市場政策に取り組んでいる。その中では,アメリカ主導の下でのグローバル化,とりわけ新自由主義という波にさらされているのがスウェーデンだけでなく,とくに先進諸国にもあてはまるのが経済社会の実情である。もちろん,スウェーデンにおける,グローバル化と労働市場の変容は報告で導く課題の一つである。そこでのキーワードは,労働力商品の脱商品化とポスト工業化社会である。換言すれば,積極的労働市場政策とスウェーデンの経済成長がどのように関連しているかを見ていく。それは,スウェーデンは,福祉国家を維持する基盤を福祉国家という概念でなく,アメリカで生まれたワークフェアという概念がスウェーデンにおいて達成された勤労福祉としてのワークフェア国家であることを意味することを明らかにする。最後に,グローバル化時代での福祉国家の可能性を報告する。それは,グローバル化時代の中で一国福祉国家,国民経済は古い用語方でないかということを意味し,そのせめぎ合いとして雇用の分権化問題が挙げられ,産業はグローバル化した多国籍企業によって担われていることを報告する。その際,グローバル化という問題は,ただ一国の利害関係としての反グローバル化を唱えるのでない報告をする。

第2報告

不況下の労働市場における若年者の雇用問題
−フリーターという<自己実現>の隘路−

小渕 高志 (武蔵大学)

 従来の議論では、フリーターは親に経済的依存を続ける「パラサイト・シングル」の代表者というイメージが強く、「甘え」や「モラトリアムの再延長」といったステレオタイプの議論に終止してしまいがちだった。本研究では若者の就業問題としてフリーターを捉え、若者と労働市場をめぐる問題を、青年文化論と労働経済的視点から考察した。そのための問題設定を、若者が大きな関心を寄せる職業を通じての自己実現という文脈のなかで行なわれる就業行動においた。実際には正社員としての就職ができなかったのでフリーターをするという若者が多いことから、フリーターを単なるモラトリアムでひとくくりにせず、失業なき労働移動の実現に向けた具体的な解決策を検討すべき段階にきている。

 その理由は、かれらの労働力の質が正規従業員とは異なっている点から、正規雇用とは分断された労働市場にとどまり続けているという現実にある。そうした意味では、労働市場が2つに分断され求人と求職とのミスマッチが起きているとも指摘できる。今後はこれらの市場間の移動を円滑にするような労働政策が必要であり、技能形成への啓発や就労インセンティブを高めるプログラムを通じて、かれらを正規雇用の市場に移行させることが求められる。本研究はそうした社会政策的課題の打開の可能性を、青年文化の社会学と政策研究の2つの視点から探った。

第3報告

地位達成における社会的資本の効果
−同類原理の検討

石田 光規 (東京都立大学)

 社会的資本とは諸個人や諸組織に対して何らかの有用性をもたらす社会関係に埋め込まれた資源である。社会的資本の地位達成機能については、近年、アメリカを中心として盛んに行われている。日本においては転職における強い紐帯、すなわち同類原理の効果が指摘されている(渡辺 1991)。しかし、同類原理の実際の効果については直接検証されておらず、日本の地位達成に対する社会的資本の効果については、研究の余地が残されていると言えよう。そこで本報告においては日本における地位達成にたいするネットワークの同類原理の効果を検討し、それを通じて地位達成における社会的資本の影響力を明示することを目的とする。その際、分析には、「社会意識に関する東京住民調査」(代表 村瀬洋一助教授)のデータを用いた。

 分析の結果、諸個人の地位に効果的な影響を与えるのは、紐帯の強弱やネットワークの同類性・同質性ではなく、ネットワークにいる人々の地位と、結ばれる関係の種類であることが明らかになった。すなわち、ネットワークを通じて高い地位の人々と関係を結んでいる人や職場の人々を中心にネットワークを構成している人が高い地位についている。その背景には、内部労働市場を通じた人材育成という、日本特有の労働条件が考えられる。

第4報告

女性の大学教育・初職特性と結婚を通じた地位達成

嶋守 真由美 (シカゴ大学・東京大学社会科学研究所)

 女性にとって大学教育や初職は結婚機会と密接に結びつき、地位達成に大きな影響を与えていると考えられる。大学・学部特性や初職特性は、結婚を通じての地位達成にどのように関連しているのだろうか。本発表では大卒者男女へのインタビュー調査に基づき、様々な教育特性(大学特性・学部特性)や初職特性が「結婚を通じた女性の地位達成」に与える影響について、人々の認識を分析した。

 分析結果によると、女性の教育・職業は大きく3種(「地位表示型」・「女性占有型」・「男性占有型」)に分かれ、「女性占有型」は社会的地位の高い男性と結婚するのに有利、「男性占有型」は不利と認識される傾向があった(ただし「男性占有型」は下位分類で「高地位型」と「低地位型」とに分かれ、前者は不利な評価にはつながっていない)。また、回答者の背景は評価に影響し、母が専業主婦の家庭出身者は「地位表示型」を有利だと見なし、学力の高い者は「男性占有型」を有利とする傾向が見られた。さらに女性は男性より「地位表示型」「女性占有型」を評価する傾向があった。

 「女性占有型」「地位表示型」の教育や職業の選択は、しばしば女性の職業達成を妨げる原因と見なされてきた。しかし、それにも関わらずこれらの「女性向き経路」が多くの女性に選ばれてきた背景には、これらの「結婚有利度」への認識も関係している可能性があると思われる。

報告概要

直井 道子 (東京学芸大学)

 第1報告「スウェーデン経済の現況-産業と労働」(大北秀明)は、新たなスウェーデン・モデルとして近年ワークフェア(勤労福祉)国家が模索されていることに注目する。それは市民の生産性を最大限に引き出そうとし、失業を長期化させず、雇用サービス支援や斜陽産業から発展産業への人的移動を図るものである。第2報告「不況下の労働市場における若年者の雇用問題―フリーターという<自己実現>の隘路―」(小渕高志)は、若者がフリーターになる要因として、雇用情勢の問題と若者の職業意識の両者に着目しつつ、その両者がからみあってフリーターをますます正規雇用から分断された労働市場に追いやっていると指摘する。フリーターに自立を促し技能形成をするシステムが求められているとする。第3報告「地位達成における社会的資本の効果-同類原理の検討」(石田光規)は日本の男性の地位達成に対して、ネットワークの同類性がどの程度寄与しているのかを、データ分析によって追究した報告である。結果として職場での同類性のみが大きな寄与をしていることが示唆されていたが、データの限界についての質疑があった。第4報告「女性の大学教育、初職特性と結婚を通じた地位達成」(嶋守真由美)は結婚を通じた地位達成に対して、教育特性や職業特性が与える影響についての人々の認識を調査した結果の報告である。職業達成には不利だとみなされてきたいわゆる「女性向きの経路」が結婚を通じた地位達成には有利だとみなされている可能性が示唆された。以上の4報告は相互に深く関連しており、フリーター対策としてスウェーデン・モデルの有効性、フリータ-問題にジェンダー視点を導入する必要性などについて議論がかわされた。司会者としては、それぞれの報告の方法についての問題(データと方法の適合性。あるいは自らのデータを持たない場合の研究の可能性)などについてもっと議論したかったのであるが、それは時間の関係でできなかった。以上。

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