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年次大会
大会報告:第51回大会 (報告要旨・報告概要:自由報告 第11部会)

第11部会:都市空間と分化  6/15 10:00〜12:30 [3号館3階332教室]

司会:浦野 正樹 (早稲田大学)
1. 木造住宅密集地域における社会的分化
−横浜市子安浜地区の事例−
武田 尚子 (武蔵大学)
2. 「若者広場」設置活動にみる都市社会運動の新たな動向
−「土浦駅西口広場」設置を求める諸実践とその後の展開−
田中 研之輔 (一橋大学)
3. クラブカルチャー
−「アーバニズムの下位文化理論」からのアプローチ−
石渡 雄介 (東京都立大学)

報告概要 浦野 正樹 (早稲田大学)
第1報告

木造住宅密集地域における社会的分化
−横浜市子安浜地区の事例−

武田 尚子 (武蔵大学)

 大都市の居住空間について、取り組まねばならない課題の一つに、木造住宅密集地域の再開発問題がある。都市部の老朽化した木造住宅密集地域は、長い年月の間に独自の変化の過程をたどっており、地域社会としてそれぞれ固有の特性を内包している。地域社会固有の特性は、日常の時点では必ずしもリスクという枠組でとらえられているわけではない。しかし、非日常の災害発生時に、固有の特性が地域社会の回復をおくらせる負の機能を果たす場合がありえる。このような可能性をもつ固有の特性を、潜在的リスクという観点からも認識しておく必要があると考える。

 本報告は、このような問題意識にもとづき、木造住宅密集地域である横浜市神奈川区子安浜地区を事例に、潜在的リスクの可能性のある、地域社会固有の特性を指摘し、その特性がどのような過程を経て、社会的に形成されてきたものであるかを明らかにすることを目的としている。子安浜地区は、第一次産業である漁業の推移と関連して、変化してきた地域である。1970年には、横浜港整備にともなう埋立事業で、漁業権を放棄し、漁業者は完全転業せざるを得なかった。しかし、その後、漁業にもどる人々が一定数存在し、地域社会の状況は複雑さを増している。完全転業という出来事を契機として、地域社会内に新たに生じた社会的分化とその背景、潜在的リスクと考えられる点について報告する。

第2報告

「若者広場」設置活動にみる都市社会運動の新たな動向
−「土浦駅西口広場」設置を求める諸実践とその後の展開−

田中 研之輔 (一橋大学)

 本報告の目的は、1990年代以降に全国的にみられるようになった「若者広場」設置活動に注目し、この活動の担い手である「若年層」の諸実践に都市社会運動の新たな動向を見出すことにある。具体的には、「土浦駅西口広場」設置を求める署名活動とその後の展開について、22ヶ月間のフィールドワークをもとに取り上げる。  

 本報告で検討するのは、次の3点である。

 1点目は、現代都市における公共空間の管理と利用についてである。「土浦駅西口広場」設置を求める署名活動により、若者は、文化的実践に取り組む「専用広場」を手に入れた。だが、それにより、若者の下位文化的活動は、駅前の公共空間から締め出されることになる。

 2点目は、「若年層」と地域住民と市議会議員が、広場設置を求めていく過程で形成した社会的ネットワークの可能性についてである。「土浦駅西口広場」の設置活動には、「スケートボード振興会」を立ち上げたスケートボードをする若者10名とスケートボードショップの店長が関わっていた。彼らは、駅前などで署名活動を展開し、陳情書を土浦市に提出した。この活動は、女性市議会議員と協力しながら3年にわたり継続してきた。その結果、都市再開発事業の開始までの暫定的利用ではあるが、「土浦駅西口広場」が、土浦市によって無料開放されることになった。

 3点目は、下位文化研究の蓄積と社会運動論の研究群との接近を示唆する本事例の特徴と、本報告によって導き出される分析枠組みの理論的貢献についてである。これまで、「若年層」の諸活動は、一方で、下位文化研究のなかで「抵抗」や「対抗」のモーメントとして、いわば「閉じられた」議論のなかにあった。また一方で、わが国において蓄積されてきた「新しい社会運動論」や「住民運動論」においては、担い手としての「若年層」に着眼した研究をみることはできない。そこで、本報告では、下位文化的な実践と社会運動の文化的側面とを接合させる「開いた」地平において、「若年層」の諸実践を解釈していく意義について述べる。

第3報告

クラブカルチャー
−「アーバニズムの下位文化理論」からのアプローチ−

石渡 雄介 (東京都立大学)

 本発表ではフィッシャーの「アーバニズムの下位文化理論」を検討し、彼が理論立ててはいるがいまだ検証されたとはいえない、「都市における文化的革新性」について報告する。フィッシャーは理論的には「都市はなぜいつも新しいのか」という疑問への解答を用意し、自身の理論を実証する方法としては質問紙による量的なネットワーク調査を採用した。操作仮説としては、接触する人口量が少ない居住地域に住んでいるひとよりも、多い居住地域に住んでいるひとのほうが、(1)親族関係の接触が減少する(2)近隣関係の接触が減少する(3)友人関係の接触が増大する、という大きくわけて3つを提示し、これらの仮説にそった統計的な解析を試みた。「友人関係が増大する」仮説に「下位文化」の叢生をみるのであるが、その解釈には飛躍があるだろう。そこで本発表では都市における下位文化がどのような人びとからなるネットワークを築いて、その「文化的革新性」を得ているのかということを、事例として発表者が参与している集団から検討する。

 発表者が参与している「クラブ」のイベントを企画運営する「オーガナイザー」集団は、都市における下位文化の典型的な事例と考えられる。彼/彼女らはネットワークの要となる人物を自信の集団内に引き入れることにより、イベントを変容させていると考えられる。このように、下位文化をネットワークとしてみることにより、都市下位文化の変容が理解される。おもな知見としては、ネットワークの変容がイベントの内容の変容につながるということである。

報告概要

浦野 正樹 (早稲田大学)

 本部会では、都市空間における社会分化過程と下位文化の形成・発展に関わる三本の報告が行われた。武田尚子氏による第一報告「木造住宅密集地域における社会的分化―横浜市子安浜地区の事例―」は、歴史的文脈を意識したうえで、産業と地域社会との関わりを軸としながら社会分化の過程を詳細に描こうとする試みであり、今回はとくに1971年の漁業権放棄以降の漁業集落とその伝統継続・再編過程、産業を基盤とした(漁協などの)各種集団の果たした役割と統合機能、地域の凝集力などを論じたものであった。

 田中研之輔氏による第二報告「『若者広場』設置活動にみる都市社会運動の新たな動向−『土浦駅西口広場』設置を求める諸実践とその後の展開―」は、土浦市の高卒若者層を中心とするスケートボーダーたちの若者広場設置活動の経緯とそれが実現した背後の社会力学や実践過程を見ていくことで、地域活性化や政治刷新をめざす(社会層の異なる)市民活動リーダーたちとの接触のモメントやそうして形成される「ゆるやかなネットワーク」との距離感(分離&協調←→包摂)などを内在的に明らかにし、地方都市の社会分化や階層を越える再編成・再統合の動向に迫ろうとしたものであり、方法論的には下位文化的研究と都市社会運動との接合&再評価を狙ったものであった。

 石渡雄介氏による第三報告「クラブカルチャー―『アーバニズムの下位文化理論』からのアプローチ―」は、アーバニズムの下位文化理論をベースにしながら、文化的革新性がどのように生成されるのか、そのプロセスを明らかにしようという野心をもった研究であり、酒を飲みながらDJの選曲により踊るダンスクラブの「オーガナイザー集団」を調査対象として、下位文化集団のネットワーク変容のメカニズムとそれに伴うクラブ文化の質の変容を関係づけた事例報告であった。

 これらの研究報告は、三者三様に、今後発展の可能性の感じられる興味深い問題意識や方法論的な意図をもったものであった。ただし、報告の時点では、フィールド調査の鉱脈を探り出す途上の段階でもあったため、なかなか問題意識とファクトファインディングスとの関係が明瞭に結び付けられていないこともあって、報告間の相互交流の接点を持ちづらいきらいがあった。全体の質疑応答では、そのへんを意識したやりとりがなされたが、十分な時間がとれず消化不良の印象は残ったと思う。報告した三者には是非今後の研究の実りある発展を期待して部会報告にかえたい。

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