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年次大会
大会報告:第52回大会 (報告要旨・報告概要:テーマ部会B)

テーマ部会B 「ジェンダー不平等の多面性」  6/20 14:15〜17:30 [8号館1階813教室]

司会者:伊藤 るり (お茶の水女子大学)  橋本 健二 (武蔵大学)
討論者:岩澤 美帆 (国立社会保障・人口問題研究所)  元治 恵子 (立教大学)

部会趣旨 橋本 健二 (武蔵大学)
第1報告: 雇用多様化のなかのジェンダー
---非正規就業者に着目して---
佐藤 香 (東京大学)
第2報告: 国際労働力移動とジェンダー
---生産労働の外国人女性と高卒女子無業者の関係に着目して---
筒井 美紀 (京都女子大学)
第3報告: 少子高齢化社会の親子関係におけるジェンダー
---成人未婚子と親の関係に着目して---
白波瀬 佐和子 (筑波大学)

報告概要 伊藤 るり (お茶の水女子大学)
部会趣旨

部会担当: 橋本 健二 (武蔵大学)

 テーマ部会「ジェンダー不平等の多面性」は、これまでエスニシティやジェンダー、都市底辺層など、不平等に関する諸問題を扱ってきた各テーマ部会の議論を受け継ぎながら、ジェンダー不平等をより広い視野からとらえかえすことを目指すものである。
 社会学において、従来から不平等問題を扱ってきたのは階級・階層研究である。しかし1970年代以降、ジェンダー研究が盛んになる中で、階級・階層研究はジェンダーの問題を無視もしくは軽視してきたという、厳しい批判にさらされるようになった。こうして、女性を正当に研究対象に含みながら、階級・階層とジェンダーの関係を明らかにしようとする研究の蓄積が開始されたが、そのなかで次第に明らかになってきたのは、ジェンダーは階級・階層と不可分に結びついているのであり、したがってジェンダー研究と階級・階層研究の間には構成的な関係があるということだった。しかも近年のさまざまな社会変容は、この両者に同時に、多くの課題を突きつけている。雇用の多様化は、諸階級・諸階層を内部分化させるとともに、性別職務分離の再編成をもたらす。グローバリゼーションは、エスニシティの重要性を拡大させつつ、階級関係とジェンダー関係をグローバル化する。少子高齢化は、階級・階層によって、またジェンダーによって、異なる影響をもたらす。こうして階級・階層関係とジェンダー関係はともに変化し、多様化していくからである。
 本テーマ部会は、雇用の多様化、国際労働力移動、少子高齢化のそれぞれの課題について、現代日本をフィールドとして実証研究を積み重ねてきた3人から報告を受け、多面的な様相を示しながら変貌していくジェンダー不平等の全体にアプローチしようとするものである。第一報告(佐藤香) は、雇用の多様化が進むなかで、就業形態とジェンダーの関係は、どのように変化し、あるいは変化していないのかについて、キャリア形成のありかたや収入状況・職業意識などを含めて検討する。第二報告(筒井美紀) は、単調で将来性に欠けた労働として多くの人びとから敬遠される傾向にあるとともに、ジェンダーとエスニシティ、高卒就職の問題が交錯する生産工程労働を取り上げ、この交錯状況に光を当てるとともに、労働市場や職務階層秩序の再編成についても検討する。第三報告(白波瀬佐和子) は、親と同居する成人未婚子に注目し、これらの人びとが家事参加や家計との関連で親とどのような関係にあり、その関係はジェンダー間で違うのかを議論する。

第1報告

雇用多様化のなかのジェンダー
---非正規就業者に着目して---

佐藤 香 (東京大学)

 現在、企業はパート社員など非正社員労働力や、派遣社員などの外部労働力の利用を拡大しつつある。これまで、正社員は男性、パートなど周辺的雇用は中高年女性をおもな担い手としてきた。近年の雇用多様化は、こうしたジェンダーによる役割分業にどのような影響を与えているのか、そしてまた、従来から指摘されてきた周辺的雇用の労働条件は変化してきたのだろうか。
 総務省統計局「労働力調査」によれば、非農林業雇用労働者に占める臨時雇は、1990年代を通じて8-9%で推移していたが、2002年では男女計で11.4%にのぼっている。男性では4%台から6%への上昇にすぎないが、女性では15-16%台から19.2%に上昇している。周辺的雇用の拡大は、おもに女性によって支えられていると推測できる。

 2003年度日本版GSS調査データからも、同様のことが指摘される。有職者の従業上の地位をみると、男性では常用雇用者70.5%、臨時・パート・アルバイト9.3%であるのに対して、女性では常用雇用者39.1%、臨時・パート・アルバイト38.8%となっている。常用雇用は中高年男性、臨時・パート・アルバイトは中高年女性、派遣は若年女性、自営・家族従業者・内職は性別を問わない中高年層、が中心となっている。常用雇用と臨時・パート・アルバイトの労働条件を比較してみると、年収・企業規模・女性比率・雇用契約の有無・失業可能性など、多くの点で異なっており、両者の格差が縮小する傾向は認められない。それにもかかわらず、臨時・パート・アルバイトで働く女性の満足度は高く、常用雇用者以上に時間的自由・仕事の独立性・家庭との両立を重視している。これらの条件を満たすため、女性があえて常用雇用を避けている側面もあり、ジェンダーによる区分が維持されたまま、周辺的雇用が拡大しているのが現状である。当日は周辺的雇用内部の違いにも触れつつ報告をおこなう。

第2報告

国際労働力移動とジェンダー
---生産工程の外国人女性と高卒女子無業者の関係に着目して---

筒井 美紀 (京都女子大学)

 本報告は、国際労働力移動の進展を背景とした、現代日本の労働市場における、ジェンダー・エスニシティ・高卒就職問題の交錯状況について検討する。国際労働力移動研究は、生産工程労働者といえば男性を想定してきた。こうした支配的枠組を批判してきたジェンダー研究も、女性については性・再生産労働に焦点化し、生産工程の外国人女性の爆発的増加を見逃してきた。さらには、先行研究では、「若者が3K労働を敬遠するから外国人が雇われる」「外国人が雇われるから若者が職に就けない」等の議論における「若者」とは「若者一般」であった。しかしながら、現業職が圧倒的多数を占めることから、高卒就職者はこうした「若者」の典型として特定化されてよい。

 92年頃からの高卒無業者の増加は、外国人労働者の増加による代替雇用が一因なのか。本報告はこの疑問の解明に取り組む。第1に、高卒無業者の女子化と、無業者増加の府県差を指摘する。第2に、生産工程の外国人女性の、特定府県での爆発的増加を描出する。第3に、府県をケースとして、生産工程の外国人女性の増加、高卒女子の製造業就職率、高卒女子無業者の増加という3変数の布置連関の多様性を “comparative method” [Ragin 1994] を用いて類型化し、興味深い2つの対照的地域を析出する。第4に、この原因を検討し、高卒女子無業者に関する代替雇用の2パターンを提示する。第1は、高卒女子と外国人女性が中小企業で競合し、高卒女子の賃金が停滞し、無業者の輩出につながっている。第2は、高卒女子と生産工程の外国人女性の、就業先企業のセグメンテーションが進行し、無業者率が低水準に抑えられている。第5に、以上から次の論点を提起する:(1)日本の労働市場に対する国際労働力移動の影響とは、女性内での再編か?(2)高卒女性はより不利になっているのか?(3)サービス労働における交錯状況は如何に?の3点である。

第3報告

少子高齢社会の親子関係におけるジェンダー
---成人子と親の関係に着目して---

白波瀬 佐和子 (筑波大学)

 親と同居する成人未婚子の増加は「パラサイト・シングル」という名で注目され、出生率の低下の元凶としてとりあげられてきた。親と同居して雑用から開放され、自由気ままな生活を楽しむパラサイト・シングルも、いずれ親の高齢化に直面する。本報告では、成人未婚子と親との関係を、少子高齢化の人口変動と絡ませてジェンダーの視点から議論する。
親子が同居するにあたって、子どもが一方的に親から恩恵を受けるとは限らない。成人子と同居することで親の側が恩恵を受ける場合もある。事実、低所得層において成人子との同居は家計的に利益となる。家計への繰入金は、成人子自身の所得が高いほど高くなるが、成人子以外の世帯員所得が高くなるほど低くなる傾向にある。家計への繰入金額は男性の方が女性より有意に高いが、その理由は男性の平均収入が女性よりも高いことによる。

 成人未婚子の年齢は男性79.1%、女性86.2%が30代前半に集中するが、40歳以上が男性12.9%、女性8.2%いる。同じ成人未婚子といえども、ライフステージにより親との関係が異なる。例えば、親に健康上問題があるとした成人未婚子の割合は、40歳以上になると男女ともに約3分の2に上る。親に頼る側から親に頼られる側へと子どもの立場が逆転してくる。   
親との同居は経済的な理由だけでなく、時間的な側面もある。親に身の回りの世話を頼むことができる状況は、母親が仕事を持っていない専業主婦であることが暗黙の前提となる。事実、母親が仕事を持つか否かが成人未婚子の家事時間に影響を及ぼすが、その影響は女性子にのみ認められる。女性子は母親が仕事を持っていると平日の家事時間が有意に長くなり、母親の家事代行を娘が担う状況が確認される。一方、男性子については母親の仕事の有無は平日の家事時間に何ら影響を及ぼしていない。これは、親と子の関係にジェンダー役割が介在しているといえる。

報告概要

伊藤 るり (お茶の水女子大学)

 本テーマ部会は、「ジェンダー不平等」の多様な展開を、おもに階級・階層研究との接点において捉えることを目的とし、具体的には、雇用の多様化、国際労働力移動、少子高齢化の3つの主題を取り扱った。報告者に、佐藤香氏(東京大学)、筒井美紀氏(京都女子大学)、白波瀬佐和子(筑波大学)の3人を、また討論者に元治恵子氏(立教大学)を迎えた。なお、もう一人の討論者として予定されていた岩澤美帆氏(国立社会保障・人口問題研究所)は事情により不参加となった。

 佐藤報告は雇用の多様化のなかで拡大する非正規就業者の問題を取り上げ、パート就労を志向する女性のいわゆる「合理的選択」の背景を検討するとともに、非正規就業者が賃金格差に納得しづらい現状などを指摘して、「合理的選択」の強いられた側面を明らかにした。

 筒井報告は、労働市場における高卒女子無業者と生産労働に就く外国人女性の関係を検討し、後者が日本人若年女性の職種を代替する傾向、ならびにそのパターン(「競合的代替」とセグメンテーション)について、府県差の検討なども交えつつ分析した。

 白波瀬報告は、少子高齢化のなかで増えつつある、親と同居する成人未婚子の問題を取り上げ、成人未婚子が必ずしも親から一方的に恩恵を受けていないこと、逆に、成人未婚子の家計への繰入金に見られる経済的貢献、ならびに家事及びケア労働面での寄与に注目することの重要性、またこうした貢献における男性子と女性子の違いを指摘した。

 以上の報告に対して、討論者の元治氏からは3つの報告を貫く問題として、今日のジェンダー不平等がますます複雑化するなか、不平等へのリスポンスが格差是正という直接的なかたちで見られず、総じて「女性」のあいだでの格差拡大、ないし「女性内再編」という形で調整される傾向にあるという指摘がなされ、この点やその他フロアからの質問を受けて、活発な意見交換がなされた。全体として、輪郭が見えにくくなりつつあるジェンダー不平等の今日的な課題を引き出そうとする、テーマ部会の狙いは一定程度達成されたのではないか。最後に、報告者、討論者、そしてフロアから積極的に発言、参加してくださった会員の皆さんにお礼を申し上げる。

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