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年次大会
大会報告:第56回大会 (報告要旨・報告概要:自由報告 第7部会)


第7部会:文化・社会意識(1)  6/22 10:00〜12:30 〔1号館1階102教室〕

司会:宮本 直美(立命館大学)
1. 「Happiness」に対するHuman Development Indexの可能性と範囲
――World Values Surveyデータとの比較より[PP]
見田 朱子(東京大学)
2. 表現文化を用いた実践的活動と地域社会
――芸術はいかに機能しうるか
小泉 元宏(東京芸術大学/日本学術振興会)
3. アメリカのKARAOKEシーン
―ロサンゼルスでのフィールド調査から
宮入 恭平(朝日新聞出版)
第1報告

「Happiness」に対するHuman Development Indexの可能性と範囲
――World Values Surveyデータとの比較より[PP]

見田 朱子(東京大学)

 本研究の目的は、Human Development Index(HDI)は「幸福度」の代理指数となりうるのか、なれないとすれば、それはどうしてか、またどの程度あるいはどの面でなら、「幸福度」を表すものたることができるのか、を探るものである。この課題は、「幸福」のブラックボックス性を解くための手がかりをHDIに対して求めるものでもある。この課題のために、本研究では2000年度のWorld Values Surveyデータの国別集計を用いて、これが示す「幸福度」とHDIの値を比較する。
 このとき、次のような結論が得られた。第一に、HDIは、幸福度としての普遍的な指数ではないこと。第二に、しかし、欧米文化圏というある限定的な地域においてはHDIは「幸福度」を測る指数として一定程度認められること。第三に、こうしたことと関連して、HDIの測定するものは、北米やヨーロッパの「幸福」の基準から設計されたものの達成度であり、いわばユーロセントリックな指標であったということだ。
 以上のことから本研究は、以下のような「幸福」の構造に関する示唆を得る。1.アフリカ、中南米、アジアといった地域の「幸福」の基準は、西欧諸国とは異なるものであること。2.東欧および旧ソ連という文化圏は、「欧米文化圏」と価値観を共有しながらその制度的実現手段を持たないがために「幸福」を感じられない可能性。

第2報告

表現文化を用いた実践的活動と地域社会
――芸術はいかに機能しうるか

小泉 元宏(東京芸術大学/日本学術振興会)

 本報告は、現代美術、音楽など、表現文化活動を媒介としながら、ある特定地域が抱える社会・政治的諸問題に対する実践的アプローチを図ろうとする活動を対象とし、それら活動が持っている可能性や抱える課題を明らかにすることを目的としている。芸術文化が、ある地域が抱える政治課題や固着した社会問題に対して、どのような有効性を持ち、あるいは何をもたらしうるのかを検証し、その意味を論じていくこと、それが報告者の目指すところである。
 近年、表現文化の制作者、あるいは展覧会などアートイベントの企画者らによって、都市あるいは地方の別を問わず、ある特定の地域社会が抱える社会問題に対して、実践的な文化活動を持って解決の糸口を探ろうとする試みが増加しつつある。しかもその内には、必ずしも作品制作を前提とする狭義の芸術(表現)活動に内容を限定しない取り組み、例えば社会的活動そのもののプロセスや、そのなかで形成される人的ネットワークの拡がりを重視するプロジェクトなどが多く含まれている。
 本報告では、地域の抱える諸問題の解決を目指す表現活動の具体的事例を示しながら、どのような手法によって各々の活動が行われ、また地域の人々にそれら活動がいかに受容されているのかを分析し明らかにする。芸術文化は、差し迫った現実的な社会問題を前にして、いかなる解決の糸口をもたらすことができるのであろうか?調査研究結果を報告しつつ検討を加え、活動の現状とその可能性の兆しを探っていく。

第3報告

アメリカのKARAOKEシーン ―ロサンゼルスでのフィールド調査から

宮入 恭平(朝日新聞出版)

 報告者は、最近の国内カラオケ・シーンにみられる「ひとりでカラオケをする人」(通称「ヒトカラ」)の増加と、アメリカのソーシャル・キャピタル減退を象徴的に描いている「ひとりでボウリングをする人」の増加との関連性に注目している。本来ならば、集団的行為のカラオケやボウリングが、個人的行為として実践されているのだ。仮に、パットナムが指摘するように、「ひとりでボウリングをする人」に象徴される集団的行為の放棄がアメリカのソーシャル・キャピタル減退と結びつくのであれば、「ひとりでボウリングをする人」の増加は日本のソーシャル・キャピタル減退と関連付けられるはずだ。もっとも、コミュニティを基盤に確立したソーシャル・キャピタルを検討するためには、日本とアメリカにおけるコミュニティ概念の違いについても検討する必要がある。
 その事前調査として、本報告では、アメリカにおけるカラオケ(KARAOKE)に注目して、アメリカのKARAOKEシーンと「ひとりでボウリングをする人」の関連性を検討する。アメリカで発表されている先行研究から、アメリカのKARAOKEは、日本とは異なった「独自」の解釈で受容されていることが理解できる。それを踏まえて報告者は、2007年9月にアメリカのロサンゼルスにあるカラオケボックスとカラオケ・バーを訪れた。そこでのフィールド調査をもとに、アメリカのKARAOKEシーンの現状を明らかにする。

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