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年次大会
大会報告:第57回大会 (報告要旨・報告概要:自由報告 第3部会)


第1報告

NPO法成立以前の市民活動の分析――運動及びNPOとの関連に着目して

松元 一明(法政大学)

 本報告では、日本における社会運動と市民活動、NPOをめぐる従来からの議論に対し、データによる実証から結論を提示する。そのために「トヨタ財団」の「市民活動助成」を受けた市民活動団体の実態から以下の点を検証し、知見を示す。
<検証点>
(1)住民・市民運動を含む「新しい社会運動」と1970年代以降の市民活動の関連性、および後のNPO法人をはじめとする市民セクターとの関係を考察することにより通底する一貫性をみる。
(2)1970年代以降90年代前半までの市民活動の動向を時系列で捉え、変遷を明らかにすることから、現在の市民セクターの特性と課題を示す。
<対象・方法論>
助成事業と団体(507件・310団体)、特に1994年度までの事業187件、136団体を重点的にみる。団体の設立年、活動分野、法人形態を項目化し、設立年代による活動分野の相違や、活動分野と法人形態の関連などを追う。
<知見・結論>
1985年前後の「新しい社会運動」、「ネットワーキング」概念の導入、「ボランティア概念の刷新」により、市民活動に質的変化が生じたことを指摘する(「1985年転換」)。 結果的に市民活動は「『新しい社会運動』のバリエーション」であり、「多様性とその混在」は、「イシューの複合化および長期的イシューにたいする変化」であると結論づけた。 さらに市民活動全体の構成的変化により得たものがある反面、漏れ落ちたものに市民セクターの課題を見る。そしてセクターの成熟のためには、継続性を重視したNPOと運動の共存が望ましいことを示す。

第2報告

患者・支援者による一般診療ガイドラインの評価可能性の検討──小児ぜんそくガイドブックを事例として

畠山 洋輔(東京大学)

 より良い医療の実現のために、医療者・患者間のコミュニケーションの重要性が指摘されるようになって久しい。実際、多様な取り組みが行われており、日々前進を続けている。しかし、その可能性については、依然として検討段階にあると言わざるを得ない。どのような仕組・システムを作成することが、両者の間で望ましいコミュニケーションを可能とするのだろうか。  現在、医療への患者の参加・協働の可能性を模索する先進的な取り組みのうちの1つとして、医師委員、コーディネート・チームの支援を受けつつも、患者・支援委員が構成・執筆を行うという形で作成された『家族と専門医が一緒に作った小児ぜんそくガイドブック2008』(協和企画)がある。これは、患者・支援者の専門性が最大限に発揮された取組であると言えよう。  今後、このように作成された一般向け診療ガイドラインの評価が1つの課題となるであろう。診療ガイドラインの評価として標準化された方法はあるものの、上記ガイドラインの患者参加という点を最大限に生かするための評価基準とはなっていない。  そこで、本報告では、実際に小児ぜんそく患者・支援者に聴取を行ない、患者・支援者にとって、ガイドラインがどのように位置づけられ、用いられていくか、そして、どのような観点から患者参加型診療ガイドラインを評価できるか、検討していく。そのことによって、今後の患者による診療ガイドラインの評価の在り方を模索し、医療者と患者・支援者間の積極的なコミュニケーションの促進の土台形成に資したい。

第3報告

住民・行政間の信頼関係と協力行動に関する考察 ――政策決定過程への住民関与に着目して

佐藤 彰彦(一橋大学)

 本報告は、地域(基礎的自治体)レベルにおける住民・行政間の信頼関係と協力行動に関し、主として2つの側面から考察したものである。第1点めはマクロ的見地からの分析である。具体的には、(二次分析として)東京大学社会科学研究所付属日本社会研究情報センターSSJデータアーカイブから「21世紀初頭の投票行動の全国的・時系列的調査研究(SSJDA版),2001-2005」(寄託者:JESV研究会[池田謙一・小林良彰・平野浩])の個票データの提供を受け、これを活用して住民・行政間の信頼関係と協力行動に関して行った分析である。第2点めはミクロ的見地からの分析であり、福島県飯舘村における総合計画(地区別計画)の策定過程とそこへの住民参画の変遷をケーススタディとして取り上げる。 前者では主に、@社会関係資本と政治への信頼・参加規範、A対人的信頼感と政治アクターへの信頼、B政治への参加形態と政治参加規範、といった分析枠組みから得られた結果を報告する。ここでは主として、"procedural fairness" と "self-other merging" というキーワードが得られる。 後者では、これらのキーワードを手がかりに、ケーススタディを通じて主に、@計画の策定〜実行のプロセスが具体的にどのように行われているか、A行政体制側と住民側の信頼・協力関係がどのように構築されているか、B実際の住民参画が計画の策定〜実行の各段階でどのように担保されているか、といった分析枠組みから得られた結果を報告する。

第4報告

共依存化するアート─「地域貢献型」芸術の隆盛と、芸術の新たな「自律」の可能性

小泉 元宏 (東京芸術大学・日本学術振興会)

 90年代後半から、地域参加や地域貢献を前面に打ち出した表現活動やアートプロジェクトが急増している。地域にアーティストが入り込み、制作プロセスに地域住民を巻き込んで進められる芸術活動や、そのような表現を活用し、「芸術による地域活性化」を謳うプロジェクトが急増しているのだ。同様の傾向は、日本のみならず、英国、オランダ、トルコ、韓国、タイ、中国など、世界各国で観察することができる。大規模な国際展から、小さなコミュニティを対象とした少数グループによる取り組みまで、「アートと地域」のあいだの関係性を重視した芸術(展)の急増は著しい。 それらの実践については、地域内の文化的差異や、地域社会の人間関係の間隙を埋めるための(象徴的)活動と見なし、評価する見方もある(例えば、"Relational Aesthetics")。また「創造都市」への展開を見据えた、芸術文化によるまちづくりや文化発信の一部と捉え、推進する見方もできるだろう。 しかしながら、それらの地域参加・地域貢献型の芸術には、負の側面も含まれることへの注意が必要ではないだろうか。例えば「社会貢献」や「協働」の場では、人々の「合意性(コンセンサス)」が強く重視される。それゆえ、さまざまな政治的「不和」が隠され排除されてしまうのだ。つまり、合意性重視の姿勢が孕む政治的問題について考察していくことは、欠くことができない論点であろう。 芸術・文化における「合意性」重視の傾向は、何を導くのだろうか。報告者は、地域貢献型の活動に関わるアーティストやキュレーター、オーディエンス、地域住民らに対するインタビューやフィールド調査に加え、ジャック・ランシエールやシャンタル・ムフらによる、民主制における「合意性」重視傾向の危険性についての考察も参照しながら、地域との関係性を重視し、「共依存」化しゆくアートの様相と、そこからの脱却の可能性について議論していく。

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