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年次大会
大会報告:第59回大会 (報告要旨・報告概要:自由報告 第2部会)


第2部会:労働

司会:山田 信行(駒澤大学)
1. 協同労働における会議場面の分析――エスノメソドロジーの視点から[PP] ○秋谷直矩(埼玉大学)・
山田友嗣(株式会社ニチイケアパレス)
2. 年休取得に関する6類型[PP] 井草 剛(早稲田大学)
3. 身体に電気を流す[PP] 海老田 大五朗(新潟青陵大学)
4. 外食ファーストフード店舗管理職の仕事[PP]  田中 研之輔(法政大学)
第1報告

協同労働における会議場面の分析――エスノメソドロジーの視点から

○秋谷 直矩(埼玉大学)・山田 友嗣(株式会社ニチイケアパレス)

本研究では、協同労働における会議場面を対象に、エスノメソドロジーの視点から、その働き方のいくつかの特徴を析出する。

本研究の背景として、近年、日本では「新しい公共」として、協同労働という働き方への注目が集まっているということがある。この働き方に対しては、たとえば協同総合研究所による様々な調査研究の蓄積はあるが、他方、実際に働いている現場で組織される活動それ自体に注目した研究はまだ端緒についたばかりである。

また、エスノメソドロジーの視点による組織研究、とくに会議場面の研究(たとえばビジネスコミュニケーション誌のミーティング研究特集:Asum? & Svennevig, 2009)への関心が高まっているが、協同労働における組織研究は、国内ではまだない。

協同労働という理念のもと、自分たちの働き方を組織していくことは、当事者たちが常に直面している課題である(フィールドノーツ)。であるならば、その活動それ自体を研究対象とし、その有様を明らかにしていくこと自体価値あることである。

以上の関心のもと、関東北部にあるいくつかの事業所において、07年より調査を行ってきた。本報告では、特に、協同労働における意志決定場面(特に会議場面)に焦点をあて、エスノメソドロジーの視点から調査・分析を行った結果を発表する。

第2報告

年休取得に関する6類型

井草 剛(早稲田大学)

 本報告は、2007年から2011年にかけて行った42名の正社員として勤務している労働者に対して主に機縁法によってインタビューを依頼し、実施したものに基づいている。

 労働問題における年次有給休暇(年休)の未取得要因を考える上で、年休の職場レベルでの運用のあり方は、重要な視点の一つである。間接コストという観点から、日本の年休取得の場合、基本的に代替要員の採用はなく、また企業の要員計画が、そもそも全従業員が年休をすべて取得するという前提に立っていないため、非常にタイトであり、人員も比較的に余裕のある職場ばかりではない。こうした状況下において、労働環境の質的な違いによって年休の取得のあり方に差が生じることが考えられる。本稿で注目する年休取得に関する類型と休暇の運用という点で類似する研究として、脇坂明(2002)「育児休業制度が職場で利用されるための条件と課題」がある。育児休業の場合、育休開始者の代わりに、新たに代替要員を採用しなかったケースでは、職場では現在の要員を分担方式と順送り方式という2つの方式のローテーションで主にやりくりしていることを明らかにしている。日本の年休の場合、育児休業と違い、短期であり、また細切れで取得されることが多く、そのローテーションの方法や選択基準にも違いがあると思われる。そこで本稿では、上記の先行研究を参考にしつつ、その枠組みにとらわれない「年休取得に関する5類型」という操作的な定義づけをしていく。

第3報告

身体に電気を流す

海老田 大五朗(新潟青陵大学)

接骨院に行くと、どのような症例であったとしても、必ずといってよいほどなされる施術が電気療法である。本研究の目的は、私がフィールドワークを行っている接骨院において、最も多用される施術の一つである電気療法について様々な角度から分析し、柔道整復師が電気療法をどのように考え、どのように行っているかを明らかにすることである。

主な分析の焦点は三つある。一つは、「柔道整復師が電気療法をどのように考えているか」である。私は、電気療法で使用される医療機器について、柔道整復師にインタビューを行った。電気療法は医療機器を使ってなされるため、この医療機器について柔道整復師はどのような期待をしているかがわかれば、「柔道整復師が電気療法をどのように考えているか」がわかるのではないかと思ったからである。したがって、ここではまず、このインタビューデータを分析する。二つ目は「柔道整復師は患者の身体に流す電気をどのように調整するか」である。電気を流す量は、患者の電気刺激の感じ方や、怪我の部位や程度などによって異なるため、その場その場において調整が必要である。患者の身体に流される電気の量の調整がどのようになされるかについて、実際に柔道整復師が電気療法を行う場面の録画データをもとに検討したい。三つ目は「電気療法を行うにあたり、どのようなことを考えてなされているか」を検討することである。これについては実際の電気療法について、柔道整復師自らが解説したデータがあるので、このデータを分析することで、柔道整復師の電気療法を行う際の調整の仕方を明らかにしたい。

これら三つの分析を行うことによって、柔道整復師が電気療法をどのように考え、実際に電気療法はどのようになされているかを明らかにしていきたい。

第4報告

外食ファーストフード店舗管理職の仕事

田中 研之輔(法政大学)

本報告の課題は、「外食ファストフード店舗管理職がどのような種類の仕事のマネージメントをしているのか。どのような情報を処理しているのか。誰とどのような仕事をいかなる頻度でしているのか。管理職の仕事の明確な特徴は何か。いかなるメディアを利用しているのか。」等を明示していくことである。そしてこれらにこたえていくべく、本報告ではヘンリー・ミンツバーグが『マネジャーの仕事』で取り組んだ「マネジャーの職務記述書」を作り上げる作業を下敷きにしていく。

契約社員の店舗管理職が正規新人社員の実地研修を担当しながら同時に、本部の新規事業統括プロジェクトのメンバーに選抜されるという本事例の特有性は指摘されよう。だが、そうした個別特性以外に、@管理職の経路、A情報の伝達、B組織の管理と運営、C管理職ネットワークでそれぞれにみえてきたことは、あらゆる分野で<マクドナルド化>していく現代社会の労働現場の実態を象徴的に浮かび上がらせていると考えられる。

本報告では、店舗管理職へのインテンシブなインタビュー調査と観察調査のデータを提示しながら、分析をすすめていく。