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年次大会
:第59回大会 (報告要旨・報告概要:テーマセッション(2))


テーマセッション(2):戦争体験の世代間継承(2)博物館・資料館の展示と戦争遺跡  〔リバティタワー9階 1093教室〕

司会者:浜 日出夫(慶応義塾大学)

部会趣旨 準備中
1. 戦争遺跡の保存と活用――山梨県の事例から 長谷川 曾乃江(中央大学)
2. 被爆建造物の保存と記憶の継承 深谷 直弘(法政大学)
3. 民間平和資料館による東京大空襲の記憶継承支援活動――メディア論パラダイムから教育論パラダイムへ 山本 唯人(政治経済研究所)
4. 日系人博物館における「日本人」と「戦争の記憶」の展示と語り ○山崎昌子(東京工科大学)・○池田佳子(関西大学)

報告概要 準備中
部会趣旨

 準備中

第1報告

戦争遺跡の保存と活用――山梨県の事例から

長谷川 曾乃江(中央大学)

 戦争遺跡とは戦争に関係した遺跡であり、軍事施設の遺構や構造物(例えばトーチカや地下壕、現存しているが別の用途で使用されている建物)あるいは跡地のことである。多くの軍事施設は戦時中から戦後にかけて消滅したり破壊され、残ったものも大部分が老朽化や都市再開発などで取り壊されるか、自然に風化してきた。しかしその中でも1970年代以降、中学・高校の教員らを中心とする調査活動や一般市民による保存運動の組織化が進み、1997年には日本各地の保存運動を取り結ぶ戦争遺跡保存全国ネットワークが結成された。一方、1995年に広島原爆ドームが世界遺産登録されたことで文化財保護法の基準が改正され、近代戦争(第二次大戦終結時まで)に関する遺跡も文化財保護法・条例の保護対象となった。現在、文化財に指定・登録された戦争遺跡・建造物・土木構造物は全国で170件余りある。

 戦争遺跡は、モノ(実物)としての戦争資料である。戦争体験者(ヒト)の高齢化・少数化が進むにつれ、戦争の実相を伝え、イメージを与える役割は戦争遺跡へと移行せざるをえず、すでに歴史教育や平和学習に利用されている。しかし、戦争遺跡を歴史的遺産ととらえる意識が広く定着しているとは言い切れず、保存や活用が十分行われるかどうかは、地域差や行政の姿勢などにより異なる。本報告では、山梨県の事例(甲府連隊跡・七里岩地下壕群・ロタコ飛行場跡)を通して、戦争遺跡の保存・活用のありかたを考察してみたい。

第2報告

被爆建造物の保存と記憶の継承

深谷 直弘(法政大学)

 被爆の惨状を語り伝えていく上で、原爆ドームに代表するような原爆の物理的痕跡が果たしてきた役割は大きい。しかし、こうした役割の大きさにも関わらず、被爆地長崎では、浦上天主堂跡を筆頭に多くの物言わぬ証言者は保存されず姿を消している。本報告の目的は、このような物理的痕跡の保存が「記憶の継承」において、いかなる営みを持つのかについて考察することにある。これを明らかにするために、被爆地長崎で起きた被爆建造物を保存する運動がどういったかたちで展開していったのか、保存をする際にどういった困難が生じるのかを検討していく。

 現在長崎市において、原爆炸裂から生き延びた数々の建物や壁、橋などは、「被爆建造物等」として定義され、その対象となったものは「長崎市被爆建造物等の取扱基準」に従いAからDの4段階に区分されている。事例には、「被爆建造物等」として市がBランクに指定し、一部保存の意向を示していたにも関わらず、解体された「新興善小学校(救護所跡)」を扱う。爆心地から南約三キロの地点にあったこの建物は、窓ガラスが割れるなど被害に遭ったが倒壊や消失は免れた。そのため被爆直後から5年以上にわたり、この校舎は臨時の病院として使用され、数多くの死を看取ってきた場であった。

 この事例の検討を通じて、物理的痕跡を保存する活動が原爆記憶の継承においてどういった意味を持つのかについて明らかにすることができるのではないかと考えている。

第3報告

民間平和資料館による東京大空襲の記憶継承支援活動――メディア論パラダイムから教育論パラダイムへ

山本 唯人(政治経済研究所)

 2002年、東京都江東区に民間で設立された東京大空襲・戦災資料センターでは、企画展や証言映像の制作を軸にしながら、若者世代による体験・記憶継承活動の支援、若手アーティスト・研究者との共同制作・共同研究などの試みを行ってきた。本報告では、第1に、体験・記憶継承の課題が、従来の「記録する」「伝える」ことから、「次世代の学びを支援する」、継承の担い手を「育てる」ことへと移ってきている現状を、戦災資料センターの実践例を通して検証し、第2に、そうした状況の変化を、どのような理論的角度から捉えていけばいいのかを検討する。

 具体的には、近年、小林多寿子や小倉康嗣などによって展開されている「ジェネラティヴィティ」の議論などを参照しながら、博物館の役割を「体験者」から「非体験者」に向けて体験・記憶の内容を送信する単なる「メディア(媒体)」として捉えるだけでなく、「体験者」と「非体験者」、「モノ」と「人」、「展示空間」と「都市空間」などがダイナミックに交渉し、継承世代の「学び」や「人材育成」の活性化を促す過程の全体像をフォローする、「教育論パラダイム」への視野の拡張という論点を、問題提起する。

第4報告

日系人博物館における「日本人」と「戦争の記憶」の展示と語り

○山崎昌子(東京工科大学)・○池田佳子(関西大学)

 この発表は、国内国外の日系人ミュージアムのフィールド調査をもとに、「日本人」と「戦争の記憶」が、様々に異なったアイデンティティを持つ観客に対して、いかに展示され、いかに語られるかを、社会学のなかで発展したエスノメソドロジー・会話分析の手法を用いて分析しようというものである。この発表ではまず、海外移住資料館(横浜)、全米日系人博物館(アメリカ)、アメリカ村カナダ資料館(和歌山県)、日系博物館・ヘリテージセンター(カナダ)、日本ハワイ移民資料館(山口県)等の移出民と移入民を扱った対称的な国内国外の日系人ミュージアムでの展示について調査した結果をふまえ、「日本人」と収容所経験を中心とする「戦争の記憶」がいかに展示され、収容所経験を直接あるいは間接的にもつガイドによっていかに伝えられているかについてメディア研究の立場から概観する。さらにこの発表では、日系人ミュージアムにおけるビデオを用いた調査から、日本人や日系人のボランティアのガイドが、様々に異なったアイデンティティを持つ観客に対して、どのようにして自分自身の体験や日本人の体験を「日本人」や「戦争」という文化的歴史的カテゴリーを用いてパッケージ化するのかを会話分析の方法で示す。この発表は、アイデンティティや文化の問題に関心をもつ社会学者にとって有意味であるとともに、語られる歴史を研究する他の社会科学者にとっても大きな意義をもつと思われる。

報告概要

準備中

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