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年次大会
:第62回大会 (報告要旨・報告概要:テーマ部会A)


テーマ部会B 「自己/語り/物語の社会学・再考」

担当理事:小林 多寿子(一橋大学)・浅野 智彦(東京学芸大学)

部会要旨  
1. 自己論とナラティヴ・アプローチ 野口 裕二(東京学芸大学)
2. Middle wayを行きつつ―リアリストとアンチリアリストの狭間で 鷹田 佳典(早稲田大学)
部会要旨

 本テーマ部会の目的は、「自己について語る」という営みについての理論を再検討することです。
自分自身について物語るという営みについて1990年代から2000年代初頭にかけて様々な理論的検討がなされてきました(ライフ・ヒストリー/ライフ・ストーリー論、自己物語論)。それらの検討を通して、自分自身についての語りが、語りがなされる時点からの遡及的な再構成であること、語り手と聞き手との相互行為に依存して構成されること(「ヴァージョンの展開」)、語りがつねに現時点での自己再帰性(「再帰的プロジェクトとしての自己」)の一環としてなされることなどが明らかにされました。
 その一方で、いくつかの難題についても議論がなされていました。例えば、語られる物語はヒストリーなのか(「今ここ」での)ストーリーなのか(自分「史」なのか「自分」史なのか)、物語は事実なのか、付与された意味なのか(「偽記憶」問題)、そもそも分析対象は「物語」なのか(物語が埋め込まれている)「関係」なのか、等々。 続く2000年代は、経験的な研究を蓄積する時期であったといえるでしょう。様々な領域で、様々な人々の自己語りが聞き取られ、検討され、分析されてきました。またその自己語りを支援し、増殖させる社会的な仕組み(「自己啓発」「自己分析」等)についても調査研究が行われてきました。では2010年代も半ばに入ろうとする現在、経験的研究の蓄積を踏まえて、理論を振り返ってみたときどのようなことがいえるでしょうか。かつて見いだされた問題は解決(あるいは脱問題化)されたのでしょうか、それとも放置されたままなのでしょうか。後者の場合、現時点での知見から、かつての問題について何がいえるのでしょうか。このような問いかけは、同時に、現在も旺盛に進められている自己語りの研究の理論的な含意について振り返る機会にもなるはずです。
 このようなテーマに基づき大会では、野口裕二さん(東京学芸大学)と鷹田佳典さん(早稲田大学)を報告者にお迎えします。野口さんには、「自己論とナラティヴ・アプローチ」と題して1990年代以来の物語論の展開を踏まえ、それ以降に蓄積されてきた経験的研究について何が今理論的に問われるべきなのかについてお話しいただきます。鷹田さんには「Middle wayを行きつつ―リアリストとアンチリアリストの狭間で」と題してフィールドワークを実践する中で理論とどのようにつきあっておられるのか、お話しいただきます。また、お二人の報告に対して浅野智彦(東京学芸大学)が討論者としてコメントをします。
 なお今年のテーマ部会は、シンポジウム形式ではなく、ラウンドテーブル形式を採用します。活発な議論が交わされるよう運営していきたいと思います。

(文責:浅野 智彦)

プログラムはこちら

第1報告

自己論とナラティヴ・アプローチ

第2報告

Middle wayを行きつつ―リアリストとアンチリアリストの狭間で

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