HOME > 年次大会 > 第68回大会(報告要旨・報告概要) > テーマ部会B
年次大会
:第68回大会 (報告要旨・報告概要:テーマ部会B)


テーマ部会B「ワークショップ時代の統治と社会記述―まちづくり・ワークショップ・専門家―」

担当理事:加島 卓(東海大学)、元森 絵里子(明治学院大学)
研究委員:牧野 智和(大妻女子大学)、仁平 典宏(東京大学)
部会要旨 文責:元森 絵里子
部会要旨

 テーマ部会Bでは、2年間かけて、現代社会の記述の困難について議論していこうとしています。かつて、国家権力―住民自治、専門家支配―市民参画、教育―遊び、労働―余暇のように、近代的な大文字の諸価値に新しい価値を対置するという対抗図式が各分野で用いられ、社会学者もそれに掉さしてきました。逆にある時期からは、住民自治や市民参画の理想を掲げることが、コストカットと自己責任を旨とする新自由主義の統治を下支えしてしまう可能性を反省的に指摘することが、社会学者の役割のようになったりもしました。
 しかし、そうこうしているうちに、「自治」や「参画」や「選択」の理想は、対抗的なトリックではなく、新自由主義的な自治体政策(統治のモード)のなかに組み込まれて久しくなりました。「〇〇化社会」式のグランドセオリーも、「新自由主義」だという批判も、それが私たちの日常に根付き、そのなかで切実な実践が行われている現状に対し、空を切ってしまう感があります。タイトルになっている「ワークショップ時代」とは、このような時代を大まかにイメージしています。コンサルタントやマネジメント系の論者の記述のほうが力を持っているかにも見える「ワークショップ時代」に、社会学者はどう関わり、それをどう記述したらいいのか、分野横断的に議論をしてみたいと思います。
 ワークとアートという2つの領域からこの現状を確認した研究例会を踏まえ、今回の大会時テーマ部会では、正面から「ワークショップ」を共通テーマにしてさらに議論を重ねていきます。
 第一報告の牧野智和さんからは、建築・まちづくり系のワークショップをめぐる知と実践の歴史的変遷から、市民を巻き込む技法が批判や反省も取り込みながら洗練されていく過程をご紹介いただきます。第二報告の植田剛史さんからは、都市計画というハードの専門家が、コンサルタントとしてワークショップをファシリテートするようになるに至る歴史や、行政と市民に挟まれ、なんでも屋であることが求められるなかで専門性の維持に苦慮する実情を紹介していただきます。第三報告の五十嵐泰正さんからは、実際にまちづくり等の現場に住民・市民として関わるなかで、社会科学の専門家でもある立場として、どのような判断でどのような振る舞いや記述をしているかを具体的にお話いただきます。
 討論者には、典型的なワークショップとは少し異なる実践「福島ダイアログ」を運営する安東量子さんと、近現代の都市と社会記述に関する論考を多く発表されてきた近森高明さんをお迎えします。これらを通して、「ワークショップ」の現状理解を共有すると同時に、それを記述する社会学者のポジショナリティや、そこにおける人々の振る舞いの技法を記述する道具立てなどを議論していきたいと思います。テーマ部会の成果は、次年度の研究例会と大会時テーマ部会にも引き継いでいきますので、議論に多くの方が加わってくださることを期待いたします。

報告者および題目:
まちと「自分ごと」のデザイン:まちづくりにおけるワークショップ活用形態の展開から
牧野 智和(大妻女子大学)
プロジェクト型開発の時代における都市計画コンサルタントの専門知
植田 剛史(愛知大学)
「みんなで決める場」と「みんなが話せる場」のあいだ
五十嵐 泰正(筑波大学)

討論者:安東 量子(NPO法人福島ダイアログ)、近森 高明(慶応義塾大学)
司会者:加島 卓(東海大学)、元森 絵里子(明治学院大学)

(文責:元森 絵里子)

プログラムはこちら

▲このページのトップへ