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年次大会
大会報告:第51回大会 (報告要旨・報告概要:自由報告 第3部会)

第3部会:国際移民  6/14 10:00〜12:30 [3号館3階333教室]

司会:渡戸 一郎 (明星大学)
1. 国際移民の制度的分析(1)
−外国人政策を支える4つのシティズンシップ論
梶田 孝道 (一橋大学)
2. 国際移民の制度的分析(2)
−労働市場における収斂と労働者の志向の多様化
丹野 清人 (東京都立大学)
3. 国際移民の制度的分析(3)
−移住過程と移住制度の多様性をめぐって−
樋口 直人 (徳島大学)

報告概要 渡戸 一郎 (明星大学)
第1報告

国際移民の制度的分析(1)
−外国人政策を支える4つのシティズンシップ論

梶田 孝道 (一橋大学)

 外国人をも含めた形でのシティズンシップの議論が活発である。この議論には、(1)ネーションフッド、(2)デニズンシップ、(3)パーソンフッドの3つがある。樋口直人は、外国人参政権に関する議論で、上記の(1)(2)(3)に(4)ローカルシティズンシップを加え、日本の外国人参政権の現状を分析している。しかし、その適用対象は、この問題に限らず外国人政策一般に拡大すべきである。本報告では、上記の4つのシティズンシップ論を使って、日本の「外国人問題」がどのような布置連関の中にあるかを検討する。日本では外国人一般というよりも、在日コリアン等、日系人、その他の一般外国人という形で分節化された形で問題が存在している。日系人については「過去の国民」や「血統」というネーションフッドの論理が強い。在日コリアン等については「定住外国人」とは区別される「特別永住者」という法的資格が示すように「過去の国民」というネーションフッドの論理が強い。一般の外国人についてはネーションフッドとの関わりが薄く、また「非合法」が多いことからデニズンシップやローカルシティズンシップの恩恵を受けにくい。また、政策主体としての中央政府と地方自治体とのズレが大きく、各種の外国人問題が集積する地方自治体が大きな係争の場となっており、支援団体も多い。これを可能にしているのが、ローカルシティズンシップという議論である。パーソンフッドは日本では必ずしも強くないが、「外圧」による国際人権レジームの国内への「埋め込み」によって一定の力をもつに至っている。本報告では、上記の4つのシティズンシップ論を使用して日本の「外国人問題」の布置連関を分析し、欧米諸国と対比される日本の特徴を把握し、今後に向けた課題について考える。

第2報告

国際移民の制度的分析(2)
−労働市場における収斂と労働者の志向の多様化

丹野 清人 (東京都立大学)

 本報告は、ダグラス・ノース、アブナー・グライフ、青木昌彦等によって彫拓されてきた比較制度分析を日本の外国人労働者の労働市場に適応することによって、現状における日系人労働市場の間接雇用への収斂と、労働市場における収斂が他方で労働者の志向を多様化させているメカニズムを明らかにする。比較制度分析は、社会がさまざまな方向に進む可能性があったにもかかわらず、現在の制度に収斂してしまったことを経路依存性から説明する。経路依存性は、一つの制度ができるにはそれ以前に確立した制度やその制度のうえで行為をすることに慣れ親しんできた人々の考え方に大きく依存する、という考え方である。この経路依存性を日本の外国人労働者、とりわけ日系人労働者に即して考えると、なぜ日系人の労働力市場が直接雇用ではなく間接雇用である業務請負業に収斂してしまったのかについて理論的に理解することができる。さらに比較制度分析は、経路依存性による現状理解だけにとどまらず、経路依存性がそのまま進行していった際にそのなかで行為する人間が背負い込まなくてはならない問題点を、行為主体を取り巻くゲームの連関として把握する。異なる論理が働くゲームの連鎖として捉えることにより、比較制度分析は具体的な問題発生をめぐる社会的な利害関係や社会問題を解決するために必要なルール設定そのものをクリアーにする。報告者は、このような観点から日本の外国人労働市場をめぐる諸力と現状の隘路を乗り越える可能性について行為者間のゲームとして明らかにする。

第3報告

国際移民の制度的分析(3)
−移住過程と移住制度の多様性をめぐって−

樋口 直人 (徳島大学)

 「移住過程」という言葉は、移民の開始から定住化や送出国の変動に至る一連の局面変化を指すために広範に使われてきた。しかしそれは、ナチュラル・ヒストリー的な記述概念の域を出ておらず、また理論的というよりは経験的一般化に基づいている。それゆえ、移住過程を規定・促進する要因が論理的に明らかにされてきたとはいいがたい。そこで本報告では、社会学・経済学における制度分析のアプローチを取り入れ、移住を促進/制約する制度のバリエーションを説明変数として、移住過程の展開を規定するメカニズムを理論的に検討したい。そこで注目するのは、市場や国家といったマクロな制度の媒介原理(市場交換と再分配)と、移民のコミュニティにおける媒介原理(互酬)との関係である。すなわち、外国人・移民関係の法や政策、労働市場での包摂様式といったマクロな制度は、個々の移民がとりうる選択肢を規定する。選択肢には一定のバリエーションがあり、そこから移民コミュニティにおける「信頼の構造」をなす互酬的なミクロな制度が発達していく。このようなマクロな制度とミクロな制度に着目すると、移住過程は複数の制度間の均衡点の形成とその漸次的変化として捉えられる。当日は、欧州や米国と比較した時の日本の制度的布置の特徴が、どのような移住過程のバリエーションを生み出すかを検討したい。

報告概要

渡戸 一郎 (明星大学)

 「国際移民の制度的分析」の共通テーマの下、3つの報告が行われた。会場は一杯となり、近年の本テーマに対する関心の高まりを感じさせた。「外国人政策を支える4つのシティズンシップ論」(梶田孝道氏)は、1990年前後以降の日本における「外国人問題」(日系人問題を中心とする)の展開過程を、ネーションフッド、デニズンシップ、パーソンフッド、ローカルシティズンシップの4つのシティズンシップ論を説明変数として再解釈を試みた。論点は多岐に及んだが、最大の結論はグローバル/ナショナル/ローカルの複数の領域をカバーする外国人政策の不在という点にあった。「移住過程と移住制度の多様性をめぐって」(樋口直人氏)は、90年代以降の国際移住過程を移民国家レジームと移住システムを説明変数として分析しようとした。「移民国家レジーム」とはある国家による移民規制体系を構築する言説・政策の型であり、労働力、国民主権、人権という3要素から構成される(それは「管理のジレンマ」でもある)。一方、「移住システム」は移住を促進し、その規模と移民先を決定する社会的ネットワークであり、移住システムが確立されればレジームの変動と関係なく一定の移民フローが継続するとされ、滞日バングラデシュ人とイラン人の移住過程が比較分析された。「労働市場における収斂と労働者の志向の多様化」(丹野清人氏)は、比較制度分析を適用して、移住労働者にとっての「要約表現」としての「制度」という観点から、賃金、滞在(生活の質)、権利という3つのゲームツリーを通じて彼らの多様性が生まれ、さらにそれをとりまく法制度、企業、日本人労働者などのゲームにより形成されている「強制の社会構造」が結果的に無責任なものとなっていると指摘した。以上の報告に対して、報告者相互の「制度」の定義と解釈の差異、近年の外国人政策におけるネーションフッドの変化(とりわけ中国帰国者の動向)、日系ブラジル人のデカセギ理由の例外的存在の位置づけなどをめぐってフロアとの議論が展開されたが、おしくも時間切れとなった。

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