2014年度 第1回

 2014年の第62年回大会では「包摂と排除」という主題で、プログラム構成しました。社会学の理論を中心に、「包摂と排除」にかかわる内容を取り上げてきました。たとえば、研究例会では、Prof.Dr.Cornelia Bohn(Universitaet Luzern)をお迎えしてルーマン理論についてご報告頂き、またテーマ部会Aでは、アメリカからヴェーバー研究者であるProf.Lawrence A. Scaff(Wayne State University)をお迎えしてヴェーバーの学術的な遺産などについてご報告頂きまして、どちらの場合も有意義な討論をすることができました。
 2015年も継続して「包摂と排除」を主題に、多文化主義やディアスポラにかかわる研究領域からアプローチする予定です。とくにエスニック・マイノリティに限定されない多文化社会の理解や現代社会におけるディアスポラなどを取り上げて、古典的テーマの現代的な解釈について論議することを計画しております。
 まず、2015年1月24日(土)に立教大学で第1回研究例会の開催を予定しています。今回は、佐野麻由子氏(福岡県立大学)ど慶鎬氏(立教大学兼任講師)を報告者としてお招きする予定です。佐野麻由子氏は、ネパールで現地調査を実施し、カースト、エスニシティ、ジェンダー、階級に着目する多角的な視点から、マイノリティを排除するネパール社会の権力構造を解明することを研究テーマとなさっています。まだ慶鎬氏は、在日外国人を対象とした調査を実施し、エスニック・マイノリティを排除する日本社会の権力構造に関する研究、また近年ではヘイト・スピーチに関する研究を進めておいでで、お二人には、昨年からの「包摂と排除」というメインテーマに沿った、有意義な議論を展開して頂けるものと期待しております。また、討論は、定松文氏(恵泉女学園大学)と、研究委員でもあります本田量久氏(東海大学)にお願いする予定です。定松文氏は、たとえばフランスの高齢者介護と移住女性の問題など、移住、介護、ジェンダーなどに関連する諸問題を多様な視点から取り上げて研究を進めていらっしゃいます。また、本田量久氏は、特に1960年代に至るまでの人種問題に焦点を当てながら、アメリカ社会の権力構造を明らかにすることを研究テーマになさっています。お二人からは、有意義で刺激的なコメントや問題提起をして頂けるものと思います。研究例会の詳細は以下のようです。皆様、奮ってご参加ください。

開催日程

テーマ: 包摂と排除
日時: 2015年1月24日(土) 14:00〜17:00
報告者と報告タイトル:

゙ 慶鎬(立教大学兼任講師)
「反レイシズム運動と朝鮮学校」(仮)
佐野 麻由子(福岡県立大学人間社会学部准教授)
「ネパールにおけるジェンダー、カースト・民族、階級関係 ――男児選好の促進要因の考察から」(仮)

討論者:

定松 文(恵泉女学園大学教授)
本田 量久(東海大学准教授)

司会: 中西祐子(武蔵大学准教授)
会場: 立教大学池袋キャンパス4号館1階4151
[テーマ部会A]
担当理事: 水上徹男(立教大学)、宇都宮京子(東洋大学)
研究委員: 本田量久(東海大学)、中西祐子(武蔵大学)
 

(文責:宇都宮 京子)

2014年度 第2回
 本テーマ部会は、前年度に引き続き「自己について語る」という営みについての諸研究を再検討することを目的とします。
 自分自身について物語るという営みについて1990年代から2000年代初頭にかけて様々な理論的検討がなされてきました(ライフ・ヒストリー/ライフ・ストーリー論、自己物語論)。それらの検討を通して、自分自身についての語りが、語りがなされる時点からの遡及的な再構成であること、語り手と聞き手との相互行為に依存して構成されること(「ヴァージョンの展開」)、語りがつねに現時点での自己再帰性(「再帰的プロジェクトとしての自己」)の一環としてなされることなどが明らかにされました。
 その一方で、いくつかの難題も明らかになっています。例えば、語られる物語はヒストリーなのか(「今ここ」での)ストーリーなのか(自分「史」なのか「自分」史なのか)、物語は事実なのか、付与された意味なのか(「偽記憶」問題)、そもそも分析対象は「物語」なのか(物語が埋め込まれている)「関係」なのか、等々。
 続く2000年代は、経験的な研究を蓄積する時期であったといえるでしょう。様々な領域で、様々な人々の自己語りが聞き取られ、検討され、分析されてきました。またその自己語りを支援し、増殖させる社会的な仕組み(「自己啓発」「自己分析」等)についても調査研究が行われてきました。では2010年代も半ばに入ろうとする現在、経験的研究の蓄積を踏まえて、理論を振り返ってみたときどのようなことがいえるでしょうか。かつて見いだされた問題は解決(あるいは脱問題化)されたのでしょうか、それとも放置されたままなのでしょうか。後者の場合、現時点での知見から、かつての問題について何がいえるのでしょうか。このような問いかけは、同時に、現在も旺盛に進められている自己語りの研究の理論的な含意について振り返る機会にもなるはずです。
 今年度は、特に対話的構築主義の理論を中心として検討を進めていきたいと思います。その手始めとして下記のように研究例会を行ないます。多くの方の参加をお待ちしています。

開催日程

テーマ: 自己/語り/物語の社会学・再考
日時: 2015年3月7日(土) 14:00-17:30
報告者と報告タイトル:
報 告(1) 湯川 やよい(日本学術振興会 特別研究員PD)
対話的アプローチを再考する
報 告(2) 森 一平(東京大学社会科学研究所附属社会調査・データアーカイブ研究センター 助教)
「対話的」とはいかなることでありうるのか
報 告(3) 西倉 実季(同志社大学文化情報学部 助教)
ライフストーリー研究実践における「対話」
司会: 牧野 智和(日本学術振興会) 中村 英代(日本大学)
会場: 一橋大学・国立東キャンパス マーキュリータワー7F マーキュリーホール(後掲図参照)
<キャンパスマップURL>
http://www.hit-u.ac.jp/guide/campus/campus/index.html
  [連絡先] 東京学芸大学
〒184-8501 東京都小金井市貫井北町4-1-1
浅野智彦研究室 E-mail:tasano@u-gakugei.ac.jp(@を半角にして送信下さい)
[テーマ部会B]
担当理事: 小林 多寿子(一橋大学)・浅野 智彦(東京学芸大学)
研究委員: 鷹田 佳典(早稲田大学)・中村 英代(日本大学)・
西倉 実季(同志社大学)・牧野 智和(日本学術振興会)
 

(文責:浅野 智彦)



国立キャンパス 建物配置図-----45 マーキュリータワー