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年次大会
大会報告:第41回大会 (報告要旨・報告概要:自由報告 第1部会)
第1報告

学校週五日制にかかわった組織とその役割
―東京西部のある中学校と生徒・父兄・教員・教育委員会・労組の1992(平成4)年度の調査から―

宮内 紀靖 (中国瀋陽師範学院)

 「ゆとりの教育」をモットーに、突然といった感じで1991年度から「学校週五日制」が教育委員会から提案された。この学校の例では91年秋と翌年正月に、PTA主催の「父親交流会」集会にPTA役員と学校側管理職とその他の教員も出席して、20名ほどの父親が出席した場で、五日制についてどう考えますかとの質問が突然出された。その場の大勢は「週休二日」大賛成というものであった。それに対して学校管理職から「週休二日ではなく、学校週五日制」と何度も注意された。

 春になって、この問題の存在を知った父兄から説明を求める声が上がり始めた。学校はこの問題を無理なく実施するために、PTAの改選を機に、昨秋の集会で賛意を強く表明した大学の教職にある人物を、会長に選任するように根回しをした。副会長には小学校から、長年にわたって役員を続けている、学校側に都合のよい主婦を選任した。

 実施年度の春が終わっても、学校から直接に父母に対して「学校週五日制」の説明はなかった。6月に体育館に約200名の父母を集めて、PTA生活指導部主催による「父母と先生の交流会」での校長挨拶でちょっと触れただけであった。ついで、6月末にPTA教養部主催の「家庭教育講座」(年3会実施)で、校長の強い要望により、都心の前年度週五日制実施校・前校長で現教育委員会職員による「学校週五日制の実施を前にして―家庭に期待すること」の講演が行なわれた。

 そして、教員と父兄の一部の強い不安を残したまま、9月から月一回の土曜休日が実施された。

 そのような実態と、6月上旬の、学校週五日制についての(PTA教養部による)アンケート調査と、区教育委員会の7月実施の「学校週五日制を考える集い」、広報などを考察する。

 それに加え(文部省)・教育委員会・学校・PTA・教員・父母・教職員労働組合などの組織と単位人間の、役割と行動を分析する。

第2報告

企業の社会貢献活動をめぐる理論構築に向けて
―“実利的”社会貢献の必要性―

岩田 若子 (産能大学)

 米国では、Stake Holders の影響力が増大したことによって、企業は、外部への社会的費用の押しつけが結局高くつくことを、1960年代から1980年代に学んだ。これを契機に、1980年代後半、企業の経営パラダイムは、 Stock Holder 重視の“経済的効率性”から Stake Holder 重視の“社会的適合性”へそのプライオリティを転換したといえる。社会的適合性とは、企業が社会システムの構成単位として、他の構成単位と利害を調整しながら、過剰生産、過剰処分、過当競争など、社会的配慮を欠如する問題を解決することが重要視される新たな価値体系である。この文脈において、企業の市民社会化論議は活発化してきた。

 概して、企業の社会的貢献活動は次の2つの形態のいずれかをとる場合が多い。専門部署の設置あるいは企業財団の設立である。どちらの形態をとるかは税制上の問題である。いずれにおいても、単に社会に give するだけでそこから take しようとする発想は見出せない。社会貢献活動は社会の一員として当然の責務であり、企業本来の営利活動とは区別すべきであるという見解が前提となっている。

 ところが最近、本業との調和・重複点において、社会貢献活動を試みようとする企業が出てきた。企業の利益につながるからやるという実利的立場である。

 本報告においては、企業の一方的な持ち出しを強いるような活動には限界があるという認識の下に、第3の選択肢の論理構造を解明する。

第3報告

直系制家族にみる配偶者選択の変化
―長期反復調査データからの三世代比較研究―

大友 由紀子 (成城大学)

 戦後日本の結婚観は、夫婦家族制理念の浸透を基盤として、伝統的な家族主義の結婚から個人主義の結婚へと変化しつつある。本報告は、直系制家族における配偶者選択の変化をみることから、直系制家族の形態的・質的変化を考察しようとするものである。ここで用いるデータは、1966年から1992年までの26年間森岡清美とその門下生とによって5回にわたって反復的に行われてきた、山梨県勝沼町における家族調査によっている。子の長期反復調査は、当初、二世代比較による社会変動の研究のためにデザインされ、1966年調査段階において二世代夫婦揃いの完全直系家族で、子世代の夫の生年が1921(大正10)年から1935(昭和10)年である108世帯を対象としている。第5回調査の行われた1992年には、このうち38世帯で孫世代が家族核を形成しており、これらの世帯については三世代間での配偶者選択の比較が可能になった。見合いやデートの有無、結婚する若者の意志の尊重される度合い、結婚相手に求める条件、および配偶者選択プロセス等を親・子・孫夫婦三世代について比較分析し、その間の差異より直系制家族の内的変化を把握しようと考える。また、意識を問う項目については夫婦間の差異についても留意し、性別による新しい結婚パターンの浸透度の違いにも注目したい。

 なお調査結果、分析結果についての詳細は、当日会場にて資料を配布する。

第4報告

誰が性別分業から利益を得ているか
―上野『家父長制と資本制』等の所論を検証する―

立岩 真也(千葉大学)

 性別分業の現実を説明しその不当性を言う主張、「(1):家事労働は本来は支払われるべき労働であるが支払われていない労働であり、このことを「愛の神話」が隠蔽している、(2):そのことによって夫 and/or 資本 and/or 国家が利益を得ている」の妥当性を検討する。

 (1)についてしばしば指摘されるのは、献身としての愛という観念の歴史性だが、歴史性という事実自体はこの観念の否定を帰結しない。私達は、愛情について我々が承認しうる規定及び関係の内部における自己決定の論理を前提し、愛情や愛情に基づく関係が家事労働を含む行為の義務を帰結しないことを示すという理路を採ることを提案する。その上で、市場の側には支払うべき理由がないこと、夫には支払いを要求できることを確認する。

 (2)だが、支払いによって妻が夫から得られるものはそう多くはない(夫は利益を得ていない)。さらに、性別分業から資本、国家が利益を得るという主張も論証されていない。とすれば性別分業の存在理由とその不当性は別のところにある。

 (3)第一に、(1)から国家(政治領域)と家族との関係における前者の利益と家族への行為の配分の不当性を主張できる。ただこれは直接に性別分業を説明しない。第二に、男性労働者が利益を得ること。ただし家計の一体性を考えれば、家族内部に経済的利益はない。第三に、夫一人の稼ぎで生活が可能なことが表示されること。これは歴史的事実としても確認される。男女間の関係の非対等性は、妻が稼がない方に割り振られることで従属的な位置に置かれることによる。またここから夫は、市場で得られない質のサービスを要求でき、なお残る差異によって優位を保てる。後二者が性別分業の存在とその不当性を示す。

報告概要

森岡 清志 (東京都立大学)

 第一報告、宮内紀靖氏の「学校週5日制に関わった組織とその役割」は、学校週5日制導入にからむ動きを、都下の一学校を対象として、教育委員会、学校管理職層、PTA役員層の相互関連の中で把握し整理したものであった。研究テーマ自体と知見の意味づけがもう少しアピールされたならば、参加者の関心をひきつけうる報告であったと思われる。

 第二報告、岩田若子氏の「企業の社会貢献活動をめぐる理論構築に向けて――□実利的“社会貢献の必要性――」は、企業活動が経済的効率性重視から社会適合性重視への転換期になる中で、社会システムの一員としての企業活動の中に社会貢献活動をどのように位置づけるか、その論理を明らかにしようとするものであった。経営学と社会学の接点に位置づけられる意欲的なテーマであったが、フロアーからも指摘されたように、やや単線的な論理の紹介にとどまっていたように思われる。

 第三報告、大友由紀子氏の「直径制家族にみる配偶者選択の変化――長期反覆データからの三世代比較研究――」は、山梨県勝沼氏における長期反覆調査のデータをもとに、配偶者選択過程の変化から直径制家族の内的変化を把握しようとするものである。親・子・孫世代の比較にもとづく知見はよく整理され、また興味深くもあったので、熱のこもった質疑応答がなされた。子の報告をまとめ、関東社会学会で発刊している論集に投稿されるよう期待する。

 第四報告、立岩真也氏の「誰が性別役割分業から利益を得ているか――上野『家父長制と資本制』等の所論検討する――」は、性別役割分業の存在理由とその不平等性に関する従来の論理を批判し、論証可能な論理的脈略を新たにうちたてようとするものであった。たいへん意欲的で刺激に満ちた議論を展開されたが、自由報告の時間の枠内におさまりきれない内容であったため、充分な質疑応答がなされなかった。この点司会者としてザアン年であり、また責任を感じている。

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