HOME > 年次大会 > 第48回大会(報告要旨・報告概要) > 自由報告 第3部会
年次大会
大会報告:第48回大会 (報告要旨・報告概要:自由報告 第3部会)

第3部会:情報とネットワーク  6/10 10:00〜12:30 [1210教室]

司会:成田 康昭 (立教大学)
1. Y2Kは起こらなかった?
――デジタル・ネットワーキングから見たコンピューター西暦2000年問題
干川 剛史 (大妻女子大学)
2. インターネットがもたらす新しい受療形態
――医療機関の選定を中心に
小松 楠緒子 (東京工業大学)
3. 国際ボランティア団体の組織と活動V
――活動する上での障害から
大束 貢生 (佛教大学)

報告概要 成田 康昭 (立教大学)
第1報告

Y2Kは起こらなかった?
――デジタル・ネットワーキングから見たコンピューター西暦2000年問題

干川 剛史 (大妻女子大学)

 コンピューターやプログラムが西暦を4けたでなく、下2けたで認識するため2000年1月 1日以降、年を“00”として扱い、日付にかかわる処理で誤作動が発生する」ことに起因する「コンピューター西暦2000問題(Y2K)」によって、「銀行で日付処理が狂うと、金利がマイナス計算される。鉄道や飛行機などで、新しい予約が過去のものとみなされ入力不可になる。製造業なら、仕入れ、在庫、出荷が連携できなくなる」など社会生活のあらゆる側面に影響が出ると予測されていた。

 しかしながら、西暦2000年が明けてみると、Y2Kによる社会的影響は、予想よりもはるかに小さなものにとどまった。この状況は、マスメディアだけではなくインターネットも通じて全国・全世界規模で詳細にとらえることが可能であった。

 そこで、本報告では、「デジタル・ネットワーキング(:インターネットを活用して展開される問題提示・解決のための連携活動)」という観点から行政、企業、市民のY2Kへの取り組みの実態と、今後の大規模災害へのデジタル・ネットワーキングの課題を明らかにするために、まず、1.Y2Kについての言説の内容を整理し、また、2.実際のY2Kの発生状況を概観した上で、3.その言説と発生状況への対応としての行政、企業、市民によるインターネットを活用した取り組みの実態をとらえ、その問題点を検証したい。

第2報告

インターネットがもたらす新しい受療形態
――医療機関の選定を中心に

小松 楠緒子 (東京工業大学)

 今日、日本においては、急速に高度情報化が進んでいる。医療分野もまた、その例外ではない。今や非常に多くの情報がインターネットを通じて発信されており、多種多様な医療情報が瞬時に手に入る。このような情勢を受け、患者側が医療機関・医者選びに際し、インターネットを使って情報を収集するケースも多くみられるようになった。本発表では、インターネットを利用した医療機関・医者選びをテーマとして、いくつかの事例をふまえた上で、そのメリット・デメリット・今後の課題を提示し、考察を加える。(具体的な事例については、当日口頭で発表)

メリット
  @緊急時にも、すばやく情報を入手することができる
  A情報公開性があり、ウェブ上の情報に誰でもアクセスできる
  B幅広く詳しい医療機関情報を入手できる
  C双方向性があり、場所・時を選ばず、情報の送受信ができる

デメリット (限界)
  @インターネットを利用できる者が限られている
  A情報の信憑性に問題がある

今後の課題
  @情報リテラシーを向上させ、情報格差を縮小する
  A医療機関に対する情報教育を実施し、医療機関情報の質を高める
  B医療機関情報の監査制度を創出し、情報の信憑性を高める
  C学術研究により、医療機関・医者選定行動の実態を明らかにする

第3報告

国際ボランティア団体の組織と活動V
――活動する上での障害から

大束 貢生 (佛教大学)

 1995年1月の阪神淡路大震災でのボランティア団体の活躍から5年たち、ボランティア団体を取り巻く環境は大きく変化しているように見える。この間には特定非営利活動促進法(NPO法)の制定(1998年3月)などもあり、ボランティア活動に対する行政側の対応も大きく前進したと考えられる。しかしわが国では、NPO、NGOは評価されつつも、国際ボランティア活動に対する評価は低調のままである。多くの国際ボランティア活動では、財政難や人材難など様々な問題を抱えており、その活動が不安定である。

 また、国際ボランティア活動の意味や重要性が高まっているにもかかわらず、国際ボランティア活動に対する研究は、こうした活動が最近になって必要性を認められた事もあって、研究が十分為されていないように思われる。そしてこうした研究はボランティアをする側を対象とすることが多く、受け入れ側であるボランティア団体側にはほとんど焦点が当てられてこなかったと思われる。

 そこで本報告では、1997年と1998年に国際ボランティア団体に対して行ったアンケート調査に基づき、国際ボランティア団体の活動を続ける上で当事者が抱いている困難な点を分析し、その背景にある社会的な要因を探って行きたいと思う。

報告概要

成田 康昭 (立教大学)

 本部会ではインターネットに関する2つの報告と、ボランティア組織に関する報告があった。干川剛史氏は、大災害における情報伝達研究の立場から「デジタル・メディア・ネットワーキング」の可能性と課題を報告した。自治体を含め、諸機関のY2K問題への取り組みとY2Kトラブルの発生状況などが、インターネット上で展開される大規模災害への対応の視点から紹介された。Y2Kにおいては、デジタルネットワークと災害救助ネットワークとの連携がなかったという意味では、大災害とインターネットの関係についての新しい知見はなかったが、インターネットを通じた災害に関する社会的情報チャンネル形成という意味で興味深い報告であった。フロアから今回のY2K問題では「陰謀説」などを含むデマ、流言などがインターネットでほとんど見られなかったのは何故か、といった問題提起がなされた。

 小松楠緒子氏は、患者が医療機関・医者選びに際してインターネットを使って情報収集するケースを事例に即して分析し、インターネットが社会的な情報の分布状況を変えつつある点を示した。素人間の照会システムにおける質的変化、患者の啓蒙・エンパワメントの機会へのアクセスビリティーなどについて、リアル・スペースとサイバー・スペースを対照させながら報告された。インターネットが患者と医者の間の情報的不均衡を変容させ、患者が専門家支配に対抗するという指摘は説得的であった。

 大束貢生氏は、国際ボランティア団体の組織と活動に関して、調査の分析を中心に報告された。財政難、人材難などを抱える国際ボランティア団体であるが、団体そのものに対する研究はほとんど見られない。大束氏はこれらの団体の当事者が抱いている困難性について因子分析によって、4つの成分を取り出すと共に、これを活動テーマ、回答者属性と関係させることによって実践的、組織的諸問題の整理を試みた。報告では各団体の回答者である「代表的立場にある人」1名の属性に関して分析しているが、組織全体と回答者の関係は明瞭ではない。また、それぞれの団体に特有の問題が見えにくいなどの数量的分析の限界を含め、なお課題も残されている。

▲このページのトップへ