開催日程
テーマ: |
ケアの社会学 |
担当理事: |
渡辺 雅子(明治学院大学)、池岡 義孝(早稲田大学) |
研究委員: |
平岡
公一(お茶の水女子大学)、出口 泰靖(山梨県立女子短期大学) |
日 程: |
2003年3月15日(土) 14:00〜18:00 |
場 所: |
慶應義塾大学 三田キャンパス 第一校舎1階 107教室 |
報 告: |
●村山 浩一郎(一橋大学) 「福祉サービスの自由化と公私関係の再編成−ケアハウスとグループホームの事例から−」
●新田 雅子(立教大学) 「在宅要介護高齢者の日常生活における『制度化』の問題−ホームヘルプサービスをめぐるトラブルのプロセスを通して−」 |
討 論: |
高橋 万由美(宇都宮大学)、藤崎 宏子(お茶の水女子大学) |
司
会: |
平岡
公一(お茶の水女子大学) |
研究例会報告
担当:平岡 公一(お茶の水女子大学)
本部会では、前年度と同様のテーマを掲げ、研究例会を2003年3月15日に慶應義塾大学三田キャンパスで開催した。参加者は30名前後であった。
今回の例会の企画にあたっては、前年度に積み残した課題ともいえる社会的なケア、あるいはサービスのシステムや制度・政策に関わる問題に焦点をあてることとし、これらの問題についての研究実績をお持ちの村山浩一郎(一橋大学大学院)、新田雅子(立教大学大学院)のお二方に報告をお願いした。
村山氏の報告「福祉サービスの自由化と公私関係の再編成−ケアハウスとグループホームの事例から−」では、近年の規制緩和・市場化推進策のなかで進展しつつある社会福祉事業主体・公的助成対象の自由化に焦点を合わせて、ケアハウスとグループホームという2つのサービス領域を中心に、自由化の実態と、それに伴う公私関係(政府と民間社会福祉の関係)の再編成の状況が分析され、今後の課題が検討された。続く新田氏の報告「在宅要介護高齢者の日常生活における『制度化』の問題−ホームヘルプサービスをめぐるトラブルのプロセスを通して−」では、「制度化institutionalization」を鍵概念としつつ、人々が要介護高齢者・サービス利用者になる際の日常生活の秩序形成のプロセスを解明することを目的として実施された質的調査の枠組みと分析結果が報告された。
討論者は、高橋万由美氏(宇都宮大学)と藤崎宏子氏(お茶の水女子大学)にお願いした。高橋氏からは、村山氏の報告に対して、非営利組織のガバナンスや国家責任のあり方等に関するコメントがなされ、保育など他のサービス分野も分析対象とすることの必要性が指摘された。藤崎氏からは、新田氏の報告に関して、理論と実証の接合への意欲的な取り組みであるとの評価がなされるとともに、「制度化」概念を基軸に据えたことの意義など多岐にわたるコメントが寄せられた。その後、フロアからの発言を交えて、活発な討論が行われた。
ケアの社会学的研究というと、従来は、ケアを担う家族の困難な状況を明らかにし、そこから政策上・実践上のインプリケーションを引き出すというタイプの研究がイメージされがちであったが、今回紹介された2つの研究は、政策やサービス供給システム、あるいは専門的実践を分析の主な対象とするものであった。今回の例会での報告・討論を通して、そのようなタイプの社会学的研究の意義が明らかにされるとともに、ケアという研究領域の「未耕の沃野」的性格が改めて確認されたといえるだろう。
|