開催日程
テーマ: |
文化の社会学 |
担当理事: |
川崎 賢一(駒沢大学)、藤村 正之(上智大学) |
研究委員: |
片岡
栄美(関東学院大学)、吉見 俊哉(東京大学) |
日 程: |
2004年3月6日(土) 14:00〜18:00 |
場 所: |
大正 大学(巣鴨校舎) 2号館3階 231教室 |
報 告: |
●田中 研之輔(一橋大学) 「〈文化の社会学〉と〈カルチュラル・スタディーズ〉の間−アーバン・サブカルチャーズ(論)を素材として」
●南田 勝也(関西大学) 「作品文化の社会学に向けて」 |
司
会: |
藤村
正之(上智大学) |
研究例会報告
担当:藤村 正之(上智大学)
前期2年間続いた〈文化の社会学の可能性〉部会の方向性をひきつぎつつ、理論・実証両面でのフレッシュな吸収を意図して、今期の研究例会は3月6日(土)に開催されました。例会では、若手研究者として、各々、スポーツ社会学、音楽社会学などとの関連を意識しつつ文化研究を積極的にされているお二人、田中研之輔さん(一橋大学)と南田勝也さん(関西大学)に研究報告をお願いしました。
田中報告「〈文化の社会学〉と〈カルチュラル・スタディーズ〉の間−アーバン・サブカルチャーズ(論)を素材として」では、文化の社会学とカルチュラル・スタディーズ(CS)の論点整理を背景として、土浦駅西口広場と新宿駅付近路地裏にたむろするスケートボーダーたちの文化実践が対比的に論じられました。氏は、ボーダー行為という日々の文化実践に潜む都市政策・労働市場・地域流動化といった社会構造要因の反映に焦点をあてようとします。理論的視点と文化実践の現場との距離を生じさせない深い記述の試みに氏の主眼の一端はあり、文化の社会学ともCSとも異なる方向性が示されました。
南田報告「作品文化の社会学に向けて」では、氏のロックミュージックの社会学的分析の知見をふまえ、固有名詞の頻出(マニアックな意味世界)、音楽自体を内在的に語ることの禁欲の限界など、文化社会学がかかえる困難がふれられました。そこで、氏は「作品文化」という概念を通じて、作品/作者の固有名詞を媒介として構成される空間へ焦点をあて、「感銘」「感応」「衝動」など「人−作品」関係に立ち現れる微細な心性の掘下げを試みることを提起します。それは、音楽・文学・映画などジャンル別研究への架橋や、「ハイ・カルチャーvsポップ・カルチャー」という対立図式を崩す試みでもあります。
議論の整理上、対比的に述べるならば、両者の報告は記述へのさらなるこだわりという点での共通性を持ちつつ、南田報告は文化現象の内部へより視点を向けようとする顕微鏡性を、田中報告は文化現象を包含する外部文脈へより視点を向けようとする望遠鏡性を有していたといえるかもしれません。今回50名を超える参加者をえて、研究例会ならではのライブハウス感覚に満ちた若手研究者同士の意見交換がおこなわれ、充実した研究会となったように見受けられました。6月の大会時テーマ部会へも多くの皆さんの参加を期待しています。
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