開催日程
テーマ: |
社会学のアイデンティティ |
担当理事: |
井出 裕久(大正大学)、山田 真茂留(早稲田大学) |
研究委員: |
数土
直紀(学習院大学)、安川 一(一橋大学)、矢野 善郎(中央大学) |
日 程: |
2005年3月26日(土) 14:00〜18:00 |
場 所: |
大正大学(巣鴨校舎) 2号館3階 231教室 |
報 告: |
●数土 直紀(学習院大学) 「社会学のアイデンティティ――理論研究の視点から――」
●矢野 善郎(中央大学) 「社会学のアイデンティティ――学説史研究の視点から――」 |
司
会: |
井出
裕久(大正大学) |
研究例会報告
担当:井出 裕久(大正大学)
前号の本ニュースで予告したように、「社会学のアイデンティティ」部会例会は、「自由な討議形式」をとった。具体的には、あらかじめ複数のトピックを用意し、1つのトピックについて数土直紀氏と矢野善郎氏からそれぞれ話題を提供してもらい、それをもとに参加者全員で自由に討議するということを、各トピックごとに行なっていった。
事前に用意したトピックは、以下のとおりである。1.社会学理論の混迷──社会学における理論研究・学説史研究の意義、個別事例研究の隆盛と社会学、ミニ・パラダイム林立状況の評価、2.社会・行動諸科学の溶解──「社会学」アイデンティティの歴史的変遷、学際的研究の隆盛と社会学、3.社会学は生き残れるか──「日本」の社会学のアイデンティティ、社会学教育の今日的可能性。
これらの各トピックについて交わされた討議・対話を要約的に提示することはできないが、数土・矢野両氏の話題提供の基本的な方向性と、参加者の発言のいくつかを紹介したい。数土氏は、「理論とは、哲学であるべきではなく、方法であることを目指さなければならない」という認識をもとに、「学の多様性を維持し、それでもなお学としてのアイデンティティを維持するためには、方法論を共有することで緩やかに結び付けられていることが理想」という観点から発言された。一方、矢野氏は、1980年代から社会学史のテキストが更新されず、社会学の「物語」化が途絶えたと社会学のアイデンティティの危機を捉えたうえで、「これからの社会学のアイデンティティ」の在処を、「経験科学的な行動科学と、意味解釈(文学的)との二つのアイデンティティの相克」を孕みながらも、「単なるピースミール臨床学でなく、包括的なコンテクストからの意義診断」に見出そうとする観点から発言された。
また、各トピックに関する討議のなかで参加者からは、「社会学はアイデンティティが常に問題になる学問だ」という見方や「競い合う仮想敵がないために混沌としているのではないか」という認識が示されたり、さらには、「マルチ・パラダイム状況のなかで、理論研究と調査研究とで依拠するパラダイムを使い分けている」といった自身の実情に言及されたりした。
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