2011年度 第2回
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山本 薫子(担当理事) 今年度のテーマ部会は「リスク・個人化・社会不安」を共通テーマとしています。そのうちテーマ部会Aでは現代社会における個別具体的な社会問題およびそれに対する社会運動(抗い)・社会政策に注目し、それらについて「リスク・個人化・社会不安」の観点から2012年3月の研究例会、6月の学会大会を通じ、議論、検討を行っていきます。具体的には、東日本大震災後を念頭にいわゆる社会的弱者・困窮者が置かれた環境の変化とその構造的背景を確認し、同時に政策的課題および社会運動の取り組みなどについて検討していきます。 東日本大震災の発生から半年以上が経過しましたが、「復興過程」といわれる状況のなかで何が、誰が「忘れ去られている」のでしょうか。本部会では、いわば「弱者(ヴァルネラブルな存在)」のさらなる「弱者」化ともいえる状況について、その実態把握と同時にそうした状況が生み出されていく過程やその社会構造的要因、それらに対する取り組みについて多角的な視点に基づいた検討、議論を進めていきます。そして、そうした作業を通じ、震災の以前・以後という時間軸でとらえたときに見えてくる今日の社会問題・社会運動(抗い)の特質や課題、それらと「リスク・個人化・社会不安」との関連の有り様について認識を深めていきたいと考えています。 2012年3月に開催予定の研究例会では、上記のテーマに即し、福祉、貧困問題、社会運動などの分野において精力的な研究活動をなさっている若手研究者を報告者としてお招きする予定です。幅広い問題関心をお持ちの皆様の積極的なご参加をお待ちしております。 開催日程
研究例会報告テーマ部会Aでは現代社会における個別具体的な社会問題およびそれに対する社会運動(抗い)・社会政策に注目し、それらについて「リスク・個人化・社会不安」の観点から議論・検討を行っていきます。具体的には、東日本大震災後を念頭にいわゆる社会的弱者・困窮者が置かれた環境の変化とその構造的背景を確認し、同時に政策的課題および社会運動の取り組みなどについて検討を行います。第2回研究例会は3月24日(土)の14時より3時間半程度、東京大学本郷キャンパス法文1号館315教室にて開催され、リスクや個人化、社会不安について社会運動・社会政策の観点からご研究を行っているお二方にご報告をいただきました。なお、出席者数は18名(報告者を含む)で、うち4名程度の非会員の参加がありました。 第一報告として、米澤旦さん(東京大学大学院/日本学術振興会)から「福祉国家再編期におけるサードセクター研究の課題-セクター間の境界の不明確化と相互作用に注目して」というタイトルで福祉国家再編期のサードセクター研究の課題を提示する報告をしていただきました。ご報告では、社会政策領域におけるサードセクター、「社会的企業」の役割が注目され、セクター間の相互作用を考慮した研究が近年試みられていることがまず示された上で、国内外サードセクター間の境界が不明確化しているという問題意識のもと、欧米を中心とした先行研究を整理し、国内での適応可能性を検討していただきました。さらに障害者就労支援に関する「労働統合型社会的企業」の取り組み事例として、「特定非営利活動法人 共同連」とその会員である複数の事業所の運営状況について、特に互酬、再分配に注目した分析がなされました。 第二報告では、渡辺芳さん(東洋大学)より「ホームレス問題における自立と社会参加」というタイトルで、路上ホームレス経験者の語りを手がかりとして「自立」と「社会参加」の関係について検討する報告をしていただきました。渡辺報告では、社会福祉政策が個人化の浸透と福祉国家の日常化を通じて人々の非貨幣的ニーズを充たす仕組みとして位置づけられてきたという前提に立ち、そうした支援メニュー再編が社会福祉政策の再編と連動している仕組みと、こうした仕組みを基盤とする社会における「自立」について、特に社会参加との関連について検討がなされました。 各報告者によるそれぞれ1時間程度の報告と事実関係に関わる質疑の後、45分間程度の全体討論を行いました。まず米澤報告に対しては、「サードセクター」、「社会的企業」それぞれの概念定義(領域区分の設定)と、それらの定義における、互酬原理を体現したものと位置づけられる媒介モデルと、再分配・市場交換・互酬原理の混合の場として位置づけられる独立モデルそれぞれの有益性について質問が寄せられました。そして、独立モデルが日本で受け入れられていることに何らかの政治的理由、学問外在的な要因があるのではないか、といった指摘もなされました。また、海外事例として、韓国の首都、地方における社会的企業の役割、社会的位置づけ(特に雇用の場として見たときの期待)の相違に関する指摘もありました。 また、渡辺報告に対しては、「ホームレス」が社会問題として顕在化する1990年代以前の、いわゆる「浮浪者」と呼び表されていた時期における「自立」「社会参加」についても検討し、今日の状況との比較分析を試みることが有効ではないか、との指摘がなされました。 両報告に関わるものとして、障がい者、ホームレスのそれぞれにおける就労自立の捉えられ方の相違についても議論がなされ、年金・生活保護などの社会福祉受給が前者では「権利」として捉えがちであるのに対し、後者の多数にとってそれは「スティグマ」である、といった言及もありました。 非会員を含む参加者によって質疑応答が活発になされ、それによって論点がより明確化され、例会はいっそう盛大で有意義なものになりました。報告者、参加者の方々に感謝し、お礼申し上げます。 研究委員: 町村 敬志(一橋大学)、仁平 典宏(法政大学) |
2011年度 第3回
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第3回研究例会 第7回修論フォーラム報告募集のお知らせ 7回目となる修論フォーラムを以下のように開催します。各大学で作成される修士論文を大学間で検討しあう機会は多いとはいえませんが、この企画は、さまざまな大学の教員や院生・学生が集まる研究例会の場で修士論文を報告・検討するものです。早稲田大学で行なわれた昨年のフォーラムでは、12名の報告があり、約90名の参加者がありました。 実施要領
応募要領
上記あてに、①〜③を郵送すること。また、①②のファイルを電子メール添付で、上記締切日までにnakasuji(アットマーク)s6.dion.ne.jp(中筋)あてに送信すること。
中筋直哉(研究委員会委員長) 修論フォーラム報告中筋直哉(研究委員会委員長) 今年で7回目となる修論フォーラムが第3回研究例会として、大会と連動させて6月9日午前に帝京大学八王子キャンパスで開催されました。今回は2011年度に修士論文を提出された7大学・9名の報告者を3つのセッションにわけ、修士論文の概要の報告と、コメンテーターからのコメントと応答、参加者を交えた討論が行われました。セッション1では、張継元氏(東京大学)「隔世家族に関する社会学的考察」(コメンテーター:藤崎宏子氏)、山根由子氏(お茶の水女子大学)「社会保障としての高齢期の住宅保障」(コメンテーター:菊地英明氏)、濱沖敢太郎氏(一橋大学)「定時制高校のエスノグラフィー」(コメンテーター:居郷至伸氏)の3報告、セッション2では、坂井晃介氏(東京大学)「ニクラス・ルーマンの政治システム論における自己言及性について」(コメンテーター:赤堀三郎氏)、小嶋慶太氏(立教大学)「アヴァンギャルドの理論とパラドックス」(コメンテーター:小倉敏彦氏)、澤田唯人氏(慶應義塾大学)「感情的な身体」(コメンテーター:奥村隆氏)の3報告、セッション3では、金澤良太氏(首都大学東京)「文化産業を対象とした政策の課題」(コメンテーター:七邊信重氏)、永田大輔氏(筑波大学)「おたく/オタクの誕生」(コメンテーター:北田暁大氏)、松村一志氏(東京大学)「近代日本の『科学主義』」(コメンテーター:浅野智彦氏)、の3報告が、それぞれ行われました。 3セッションあわせて、80名ほどの参加者があり、活発な質疑、発言が行われました。引き続き午後の大会に参加してくださった方も少なくなかったと思います。報告者、コメンテーター、参加者の皆様に、改めてお礼を申し上げます。 中筋 直哉(研究委員会委員長)
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