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年次大会
大会報告:第37回大会 (報告要旨・報告概要:テーマ部会 I)

 テーマ部会 I 「女性の進路選択プロセスとその規定要因をめぐって」  6/17 14:00〜17:30

司会:酒井 はるみ・渡辺 秀樹
討論者:藤崎 宏子・亀田 温子
1. 中・高校生女子の進路形成過程 耳塚 寛明 (お茶の水女子大学)
2. 女性の教育と職業におけるアスピレーションと達成 岩永 雅也 (放送教育開発センター)
3. 女性のライフコースと就業パターン 平田 周一 (雇用職業総合研究所)

報告概要 渡辺 秀樹(電気通信大学)
報告概要

渡辺 秀樹(電気通信大学)

 ジェンダー部会では、女性の教育達成と職業達成についての実証的研究をとりあげた。昨年度の「ジェンダーと階級・階層」というテーマ設定を受けて、今年は階級・階層に位置づいていく過程としての進路形成における性差と女性のなかの分化を明らかにしようとしたわけである。

 第一報告の「中・高生女子の進路形成過程」耳塚寛明氏では、パネル調査の分析により、女子の教育アスピレーションの不明確なこと、教育アスピレーションが成績の自己評価と相関が弱いこと、女子向きの職業志向が中3の時期に成績の下位者から強まるということなどの結果が報告された。女性の進路選択が学校メリトクラシーと表裏をなすセクシズムのなかでおこなわれていることが指摘された。

 第二報告の「女性の教育と職業におけるアスピレーションと達成」岩永雅也氏では、1985年に実施されたSSM調査における女性データの分析により、女性の教育アスピレーションあるいは初職達成に対する母親学歴の重要性、母親の就業経験と本人の職業アスピレーションとの有意な関係などが報告された。SSMの一つの研究領域であるアスピレーション研究に新たに女性データを適用することによって、従来の男性データの分析との対比が可能となり、女性にとってのアスピレーションの意味、モデルとしての母親の効果、家族キャリアとの関連の検討の必要性が指摘された。

 第三報告の「女性のライフコースと就業パターン」平田周一氏では、1983年実施の調査により、教育と職業の関連がロジスティック回帰分析を用いて報告された。女性の高学歴化が就業率を上昇させることに貢献していないということ、しかし高学歴者で未婚期に就業していた者は、育児期間終了後の就業率が高いという結果から、女性の学歴と就業との錯綜した関連が指摘された。

 討論者の藤崎宏子氏・亀田温子氏および会場の出席者から熱心な議論が提起された。ジェンダーの社会学は、女性の進路形成について重要な実証的知見を得ることができた。これらの知見を、ジェンダーの社会学として、いかに体系的に、そして理論的に取り込んでゆくのか、という課題が、全体の議論のなかで浮かびあがってきたのではないだろうか。

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