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年次大会
大会報告:第37回大会 (報告要旨・報告概要:テーマ部会 II)

テーマ部会 II 「現代国家と社会政策」  6/17 14:00〜17:30

司会:副田 義也
討論者:古城 利明・伊藤 るり
1. 新幹線建設過程の日仏比較 舩橋 晴俊 (法政大学学)
2. 都市政策にみる国家と地方自治体
―都市自治体の財源の社会過程分析―
似田貝 香門 (東京学芸大学)
3. 通商産業政策の決定過程 矢澤 修次郎 (一橋大学)

報告概要 副田 義也 (筑波大学)
報告概要

副田 義也 (筑波大学)

 このテーマ部会は、同一テーマをかかげて三年目の最終回になる。冒頭、司会の副田義也が、部会の基本的意図は、現代国家の構造と機能を政策の決定と遂行のレヴェルで論じることにあると述べた。それは、国家の社会学理論の新しい展開の契機となるはずである。報告は、船橋晴俊「新幹線建設過程の日仏比較」、似田貝香門「都市政策にみる国家と地方自治体」、矢澤修次郎「通商産業政策の決定過程」の三つであった。実証データを豊富にそろえ、多岐にわたった論点は紹介のしようがないが、やや強引にまとめるならば、日本の中央政府が、その特定の政策の決定と遂行の過程において、対外国政府(フランス政府など)、対地方自治体(神戸市など)、対世界経済(多国籍企業など)で、論じられることになった。

 討論者・伊藤るりは、フランスの原発建設の例をあげて、船橋の報告の事例の一般化に限界があると指摘し、古城利明は、国家論の最近の動向を紹介しつつ、管理国家などの視点を紹介した。フロアからの発言者は、田野崎昭夫、吉田裕、庄司興吉などで、権力エリートの犯罪、中国の官僚制、さらには、社会政策への実証的な注目は体制の問題をないがしろにすることに通じないかと多くの問題提起がおこなわれた。司会からは、残された問題の一部として、社会主義国家やイスラム国家の実態、国家の連合体としての国際連合の社会学的研究の必要が指摘された。

 日本社会学においては、国家は、かつてもっぱら観念的、思弁的に論じられ、その後は積極的に論じられることがなく長い時間が経過した。しかし、最近、政府の省庁レヴェル、政策レヴェルの実証的研究が、多方面でかならずしもたがいの関連を意識されないままに出現しつつある。このテーマ部会は、三年にわたって、それらの代表的なものを出会わせる場となり、国家の社会学理論の可能性をかんがえさせることに貢献した。

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