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年次大会
大会報告:第37回大会 (報告要旨・報告概要:テーマ部会 III)

テーマ部会 III 「社会理論のフロンティア―意味と社会システム―」  6/18 14:00〜17:30

司会:江原 由美子
討論者:今田 高俊・橋爪 大三郎
1. 意味の理論はいかなる必然性のもとで社会の理論でもあるのか? 大澤 真幸 (東京大学)
2. いかにして理解できるのか
―「意味と社会システム」再考―
山崎 敬一 (埼玉大学)
3. 社会意味論の可能性 徳安 彰 (法政大学)

報告概要 江原 由美子 (お茶の水女子大学)
報告概要

江原 由美子 (お茶の水女子大学)

 今年度も、昨年に引続き、現代社会理論の基礎的な問題を討議することを目的とする「社会理論のフロンティア」というテーマで部会が持たれた。昨年度の「自己組織性と言語ゲーム」において、「意味の社会性とは何か」、「意味に公共性はあるのか」といった論点が見出されたが、本年度はこの問題に焦点を当て、大沢真幸氏・山崎敬一氏・徳安彰氏の3人の方々から報告を戴いた。大沢氏は、「意味は、超越性を擬制する特殊なタイプの社会的実践を必然化する」という論点から「意味の理論」が「社会システム」の理論と接続する論理的根拠を呈示する。山崎氏は、逆に日常的な実践としての「他社理解」という現象から出発する必要を主張し、日常的実践としての他社理解は、「互いに互いの文脈を指示できる」という「人間の共在のありかた」に基づいているのであり、意味と社会システムを対立的なものと考える通常の「二分法」的考え方は本来成立不可能であると論じる。他方、徳安氏は、社会学的思考において通常使用されている「意味」という概念の使用法を特定することから出発し、そこにおいては「意味を実体化」する傾向があると批判する。そして「意味の理論から意味構成の理論」へ論点を移動するべきであると主張し、このような論点の移動によって「社会システム」は「意味構成の場」として意味の理論の中に最初から組みこまれうるという。報告者の考える「意味の社会性」は、少しずつ異なっていると思われるが、3者とも「意味は本来社会的現象である」という点においては共通する報告となった。討論者・フロアの参加者からは、それぞれの論者の論点の意義、あるいはこの部会の存在意義にも関わるような根源的な問題提起も含めた批判が多く提出され、意義深い討論が行われた。2回続いた「社会理論のフロンティア」部会は、一応今回で終了するが、個別のテーマを離れたこのような「基礎理論的」討議に関心が多く寄せられたことは、現代社会学理論の中で生じている「新しい理論統合」の動きを反映していると思う。討議の継続を期待する。

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