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年次大会
大会報告:第37回大会 (報告要旨・報告概要:テーマ部会 IV)

テーマ部会 IV 「エスニシティと都市社会」  6/18 14:00〜17:30

司会:長田 攻一・町村 敬志
討論者:有末 賢・三橋 修
1. エスニシティの神話 奥出 直人 (日本女子大学)
2. 在日韓国・朝鮮人の宗教文化とエスニシティ 飯田 剛史 (富山大学)
3. New Comersとしてのアジア系外国人問題
―東京・池袋地区の事例的実態調査から―
奥田 道大 (立教大学)
和田 清美 (常磐大学)
田嶋 淳子 (立教大学)

報告概要 長田 攻一 (早稲田大学)
報告概要

長田 攻一 (早稲田大学)

 昨年初めて取り上げられた「都市社会におけるエスニシティと異文化」の問題を、就業形態における偏りなどを共通の切り口とした昨年とは若干異なり、今回は「エスニシティ」概念の有効性といった議論を踏まえて、日本でのその適用可能性、都市における新たな文化形成、コミュニティ・コンフリクト、受容と排除の都市社会的メカニズムなどを比較検討することを狙いとした。

 第一報告「エスニシティの神話」奥出直人(日本女子大学)は、アメリカ合衆国の歴史の中での「エスニシティ」概念の意味変遷の整理を通じて、この概念が政策や社会統制の道具となってしまっていることを示し、その神話性を突くとともにその使用にあたっての慎重な注意を促した。また第二報告「在日韓国・朝鮮人の宗教文化とエスニシティ」飯田剛史(富山大学)は、大阪府生野区での10ヶ月に及ぶ居住経験を通しての実態調査により、日本の都市において在日韓国・朝鮮人を中心とする独特の宗教文化が形成されていることを明らかにし、若い世代の新たな「エスニシティ」維持への関心と動向についても報告した。第三報告「New Comerとしてのアジア系外国人問題」奥田道大(立教大学)、和田清美(常磐大学)、田嶋淳子(立教大学)は、東京都豊島区において近年急増しているアジア系外国人の生活実態調査と先住住民の反応調査を通じて、コミュニティ・コンフリクトの実態、地域の統合度と受容度の関係、それらの地域差などを明らかにし、日本の都市社会の今後の展開への予測を踏まえて新たな研究のパラダイムについての示唆を行なった。

 討論者の有末賢氏(慶應義塾大学)からは、日本の中でのエスニシティをめぐる問題の展開過程とその神話性の解明、さらには都市社会の階層性、マージナリティといった文脈での検討の必要性への指摘がなされ、他方、三橋修氏(和光大学)からは、エスニシティ概念を語るときに人権問題とのかかわり、階級問題と人種問題のかかわり、最終的には国家の問題が視野に入ってこざるをえないことなどが指摘された。またフロアからもヨーロッパでのracismの展開過程から学ぶことの必要性も示唆された。

 会場の熱気にもかかわらず、時間の都合で議論は報告者と討論者の間で終始する形になってしまったが、「エスニシティ」論および都市社会研究の文脈でも今後のテーマや方向性についての重要な示唆がなされたように思う。

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