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年次大会
大会報告:第42回大会 (報告要旨・報告概要:自由報告 第1部会)

 第1部会:理論関係  6/12 10:00〜12:30 [3号館3215教室]

司会:栗田 宣義 (武蔵大学)
1. H.ブルーマーにおける非シンボリック相互作用と集合行動の理論的展開 土屋 淳二 (早稲田大学)
2. 相互行為場面における権力
−差別と権力の関係をめぐって−
管野 博史 (慶應義塾大学)
3. 権力現象における共有知識の様相 樽本 英樹 (東京大学)
4. Max Weberの理解社会学を分析して 江川 茂

報告概要 栗田 宣義 (武蔵大学)
第1報告

H.ブルーマーにおける非シンボリック相互作用と集合行動の理論的展開

土屋 淳二 (早稲田大学)

 社会秩序の変動期における、集合的行為を理論的射程とする、集合行動論が抱える主要な問題として、マクロな社会変動過程に対するミクロな人間行為の理論的接続があげられよう。またさらに、集合行動論における人間行為の理論化は、日常社会における慣習化された行為と集合行動との概念的同一枠組みを要請してきた。とくにこの点は、集合行動に対する非合理/合理性判断の陥せいを回避することを意味しているものの、それを強調しすぎることは、情動性や感情伝達といった社会心理学的要因の理論的取り込みという点では有効的とはいえない。なぜなら、今日の理論的潮流は、そのことにより危機的社会状況における集合行動がもつ特質的性格や、それによってもたらされる行動結果への説得力ある説明を欠いているからである。H.ブルーマーは、日常的な安定社会の壁が崩れたときにたちあらわれる集合的営為としての集合行動を、非シンボリック相互作用局面からとらえようとした。つまり彼は、「社会的感染論者」というレッテルを越え、非シンボリック/シンボリック相互作用による動的過程分析を通して、社会変動を状況の定義に基づく行為の媒介過程に連結し、感情要因をも含む社会的相互作用論アプローチによって、集合行動研究の理論化において欠落し、無視しえない、集合的動員過程における感情メカニズムと、集合行動類型間にみられる相互転化の問題に対する方向性を提起していたといえよう。

第2報告

相互行為場面における権力
−差別と権力の関係をめぐって−

管野 博史 (慶應義塾大学)

 権力とは何であるのか?この問いに答えることから権力論は出発せざるを得ない。しかし、こうした試みは、論者によって異なる多様な「権力の定義」を生みだすとともに、権力概念をめぐる論争を引き起こすことにもなる。このような論争が、権力について各々の論者が抱いたイメージに由来し、結局のところ、自らが下した「権力の定義」の正当化に終始するものであるとすれば、それは不毛なものでしかない。それゆえこうした不毛を回避するためにも、権力論を評価するにあたっては、1.抱える対象領域が限定的である、2.他の理論よりも一般性に欠ける、3.日常的な権力概念とうまく接合しない、4.理論的に見て破綻している、5.実証可能性に欠けている、といった観点から見ていくことが重要となる。

 本報告では、上の事情を念頭に置きながら、相互行為場面における権力について、以下のような順序で考察する。まず、権力現象としばしば混同して語られる差別現象を独自に規定するとともに、ルーマン権力論を批判的に引き継ぐ形で、権力を二つの類型に分けて定義する。次に、こうした差別と権力の関係について、相互行為場面に限定しながら考察を進める。最後に、こうした権力論の課題を展望し今後の議論の方向性を確認する。

第3報告

権力現象における共有知識の様相

樽本 英樹 (東京大学)

 権力概念はそもそも「本質的に論争的な概念」である。人々の戦略的行為に付随して権力概念は語られていく。そこで、戦略性を払拭する努力をしながら権力論を論ずる必要がある。

 まず、理論の前提となる権力現象の確定を行い理論化の課題を取り出すために、日常的理解に近似した権力論を取り上げることにする。個人主義的社会理論を基礎とした当事者還元型の権力概念は、諸個人の非対称的関係として権力現象を把握している。一方は権力を「行使」し他方は「服従」するのである。しかし、その非対称性は当事者個人の属性からは導かれない「社会的事実」であり、この「社会的事実」の根拠づけこそが当事者還元論の解決するべき課題なのである。従来の権力論では、非対称性を制度・文脈・観察者の報告可能性で根拠づけようとしてきた。しかしこれらの要因は、当事者還元型の権力理論を救うには不十分である。

 諸個人の非対称的関係は、当事者の共有知識によって根拠づけられることが適切なのではないか。権力現象の当事者たちは、非対称的関係を「お互いに知っている」ために、権力現象から「退出」する(させる)ことも「抗議」する(させる)こともしない。共有知識こそが、当事者還元型権力論において権力現象の行使と服従の連結点となるのである。そこで権力現象でどのような共有知識が形成されているかを探索することこそが権力論の枢要な課題となる。

第4報告

Max Weberの理解社会学を分析して

江川 茂

 私の研究している社会学は、M.Weberの理解社会学のカテゴリーである。それは、すな わち役職(係長・課長・部長・所長)になれることが絶対にあることがあるのか。

 しかし異動期になるとなれないのは何故かという学問なのである。それは人生に於いての過程の中であり、始源と結果という勤めた時と退職時の一過程にすぎないのである。異動期というのは過程であり結果でないのである。そのように捉えるのがよいのであろう。そして原因があり結果が表われるが、そのように社会状況は起こるのでなく、原因に対して結果が妥当しない、その過程を認識するのである。その過程とは何か。過程を明らかにする事によって結果が到達されないのは何故なのか分析・検討する必要があるのではなかろうか。その分析が我々にその原因が分かってくるのではなかろうか。その原因によって結果が異なって来るのである。そして運命というものがどうしても信じられないような事が起こるというのは、その始源と結果が結びつかないからなのである。その過程に於いて問題があったからなのである。

 問題状況を分析する事によって問題の答えが分かって来るのではなかろうか。あらゆる情報を分析する事によって詳細に分析できるのであろう。その過程に於いて何らかの間違いがあるのであって、その過程が正解であるならば原因と結果の因果関係は一致するのである。

報告概要

栗田 宣義 (武蔵大学)

 本年度の自由報告第I部会は理論研究を中心に計3篇の報告がなされた(当初予定された第四報告はキャンセル)。

 第一報告である土屋淳二会員の研究は「H・ブルーマーにおける非シンボリック相互作用と集合行動の理論的展開」と題されており、ブルーマーの集合行動論におけるシンボリック/非シンボリック相互作用をともに説明軸とする複合的視点を系統的に整理したものである。土屋会員は、非シンボリック相互作用の概念装置が、ブルーマーの理論枠組みにあってシンボリック相互作用と有機的に接合されうる可能性を示唆しており、とりわけ感情的要素の伝達メカニズムを理解する際に有効性を発揮しうることを提示した。

 第二報告である菅野博史会員の研究は「相互行為場面における権力」である。菅野会員は、権力論における概念定義論争の不毛性をのりこえるためには、「何が権力であるか」ではなく「どのようにして権力が生じるか」に発問をかえる必要があると説く。その際、権力を生み出す社会関係を再構成する概念装置として、役割カテゴリー、人物カテゴリー、差別カテゴリー、強制的権力関係、可能的権力関係などを準備する。これらはゴフマンやルーマン出自の概念群に報告者の理論的ニュアンスとオリジナリティが付加されたものである。

 第三報告者である樽本英樹会員の研究は「権力現象における共有知識の様相」と題され、共有知識の観点から権力現象を整合的にとらえようとする理論的試みである。樽本会員によれば、共有知識は (1) 行為者個人の持つ要因であり、 (2) 行為者個人を越えた社会的要因でもあり、かつまた、 (3) 観察者によって有無が決定されない要因でもあるために非対称関係の再生産とその変容の二側面を抽出可能とする鍵概念になりうるというのである。

 三会員の報告がみな意欲的かつ精緻な研究であり、期せずして権力論および相互作用論に収斂していたことも幸いして、研究報告に感応してフロアーから多数の質問がなされた。とりわけ樽本会員の提示した「共有知識」の概念的輪郭をめぐって熱のこもった討論が展開された。報告者の研究水準の高さが本年度の当部会を一応の成功に導いたといえよう。

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