テーマ部会Aでは昨年度より「理論というフィールド=ワーク/理論という実践」を共通テーマとして掲げています。昨年の学会大会では、ピエール・ブルデューの『世界の悲惨』をとりあげ、社会学理論が本来備えている力能――社会的現実や対象となる「フィールド(field)」そのものを生産する構想力や対象の輪郭を浮かび上がらせる記述力――に焦点をあて、社会学における理論研究の営みについて幅広い議論が行われました。 その成果を踏まえつつ、今年度は、社会学における理論研究の応用問題としてジェンダー平等について考えたいと思います。ジェンダー平等という規範は、あるべき社会を構想するさいの主要な論点の1つですが、その平等の内実をめぐっては、何のどのような平等なのかをめぐり議論が錯綜しています。現代リベラリズム理論はジェンダー平等をめぐる錯綜した議論に1つの解を提示したといえますが、その評価をめぐってはジェンダー理論家のあいだでもさまざまな立場があります。 今年度のテーマ部会Aでは、平等を志向するジェンダー理論が有する構想力や記述力について考えたいと思います。第一報告の魚躬正明さんからは、ジェンダー平等をめぐる議論をなすさい、つねに有力な参照点の1つであり続けた現代リベラリズム(とくにJ.ロールズの議論)の枠組みでジェンダー平等に関していえること/いえないことについて問題提起をいただきます。第二報告の金野美奈子さんには、J.ロールズの政治的リベラリズムによって示唆された社会像を手掛かりとしながら、よりよい社会の構築に向けジェンダー理論が果たしうる役割についてご報告をいただきます。そのうえで、ジェンダー理論と規範的政治社会論との間での役割分担について問題提起をいただきます。第三報告の山根純佳さんからは、フェミニズムの主張が公共的問題として位置づけられるさいにジェンダー理論が果たす役割についてご報告をいただきます。特に、「累積的問題」としての女性差別の不当性とリベラリズムの公私の区分に対してもつ批判力について問題提起をいただきます。 討論者として、日本のジェンダー理論の研究でつねに最前線に立ち、ジェンダー平等をめぐる社会学的研究を牽引されている千田有紀さんと江原由美子さんにコメントをいただきます。 みなさまのご参加をお待ち申し上げます。
討論者:千田有紀(武蔵大学)、江原由美子(東京都立大学名誉教授) 司会者:流王貴義(東京女子大学)、齋藤圭介(岡山大学)
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