本テーマ部会では、現代の都市生活における〈場所性〉の意味や機能について多角的に再検討してみたい。21世紀の今日、従来の地域共同体(地縁等)とは異なり、またメディアが媒介するいわゆる〈無場所性〉の現象とも異なるような関係性が、都市化した社会空間のさまざまな局面で確認されつつある。それらは、一見、従来的な意味での地域を越えたつながりと見えるが、実際には特定の空間(〈場所性〉)を結節点として関係の形成や維持が図られている。これらの多くは、メンバーの共通の関心をもとに自発的に形成されたものであり、選択縁や趣味縁といった議論とも重なる。こうした関係性は、「新たな地縁」や「新たなコミュニティ」となりうるものなのだろうか?本テーマ部会では、その実態に迫ると同時に、そうした関係性が結束力に伴う親密性と同時に排他性をも内包していることにも注目したい。 以上のような問題意識に基づき、本テーマ部会では、主として、文化研究と都市研究とがクロスするテーマとして、現代社会における〈場所性〉を取り上げ、その特質と課題について多角的に議論を深めていくことを目指したい。 特に、今年度の大会時テーマ部会では、宗教的/非宗教的聖地、小演劇と下北沢、同人活動とコミックマーケットといった、特定の文化が特定の物理的空間(街、建物など)と密接にかかわりを持つような社会現象を取り上げたい。現代日本社会においては、地域共同体の解体と各種メディアの発達によって、文化現象と物理的空間との関わりに多大な変化が生じてきたが、それは、地域からメディアへといった単純かつ単線的な変化ではない。今回のテーマ部会では、これらの事例における〈場所性〉について多角的な視野から議論を行うことで、物理的空間とメディアの棲み分け・使い分け(組み合わせ)や、そもそもこうした棲み分け・使い分けが現代に特有の現象であるのか否かといった問題を含めて、現代社会における〈場所性〉の再考へつながる論点を検討していきたい。
(文責:芳賀 学)
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