こんにち、グローバルな経済格差と貧困問題、民族的・宗教的迫害、紛争といった危機的状況を逃れるべく、多くの人々が国境を越えて豊かで安全とされる国へと移動しています。このような動向にあって、国際機関(UNHCRなど)や人権団体などが移民・難民の支援活動を行なっています。しかし、現実には、移民・難民やその子どもたちはホスト社会で受け入れられているとは限りません。多くの移民・難民を受け入れている国々では、人種的・宗教的偏見や社会不安の高まりを背景に極右政党が台頭し、また国によっては移民・難民の国外退去/強制送還が実施されています。このような状況を背景に、自由や平等を生まれながらに与えられた権利として捉える自然権的な近代民主主義の理念、国民国家を前提とした尊厳・人権概念が批判的に再検討され、グローバル時代における民主的諸権利の保障とその条件をめぐる議論が広く展開されています。 本テーマ部会Bでは「移民・難民と人間の尊厳」と題してシンポジウムを開催いたします。本テーマ部会では、森千香子さん(一橋大学)、小ヶ谷千穂さん(フェリス女学院大学)、昔農英明さん(明治大学)に各々の専門領域から本テーマについて報告していただきます。森さんは、フランスにおける移民・難民とマジョリティを分断する差別・排除などについて、小ヶ谷さんは、フィリピン移住女性のモビリティなどについて、昔農さんは、ドイツの難民庇護政策などについてそれぞれ研究されています。討論者は、オーストラリアの多民族・多文化社会などについて研究されている塩原良和さん(慶應義塾大学)、日本に滞在する中国人ソジョナーなどについて研究されている坪谷美欧子さん(横浜市立大学)に務めていただく予定です。 本シンポジウムにおける論点は、エスニック・マイノリティ/移民・難民を取り巻く状況(権力関係の構造、イデオロギーや言説、差別や排除など)、権利保障のための制度(法律、国の政策など)、エスニック・コミュニティや人権団体の活動など、多岐にわたっており、「移民・難民と人間の尊厳」について多角的かつ重層的な議論が展開されるだろうと期待しております。みなさまの積極的なご参加をお願い申し上げます。
討論者:塩原 良和(慶應義塾大学)、坪谷 美欧子(横浜市立大学) 司会者:本田 量久(東海大学)、小山 裕(東洋大学)
(文責:本田 量久、小山 裕)
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