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年次大会
大会報告:第59回大会 (報告要旨・報告概要:自由報告 第5部会)


第5部会:文化とライフスタイル

司会:山田 昌弘(中央大学)
1. フェアトレード商品を購入するのはいかなる人か?――ロジスティック回帰分析による規定要因の解明[PP] 畑山 要介(早稲田大学/日本学術振興会)
2. 食事と食卓をめぐる日常生活における恋愛と結婚の社会学 梅原 佐知子(実践学園高等学校)
3. 感情のジェンダー化――近代日本における「少女」期を事例として 渡部 周子(千葉大学)
第1報告

フェアトレード商品を購入するのはいかなる人か?――ロジスティック回帰分析による規定要因の解明

畑山 要介(早稲田大学/日本学術振興会)

本報告の目的は、フェアトレード商品の購入を規定する要因を、統計的手法を用いて明らかにすることである。使用するデータは、2010年に実施した「多様化する消費生活に関する調査」(調査主体:立教大学間々田孝夫研究室)によるものである。

 フェアトレードは「発展途上国の生産者に公正な対価を支払う取引」であり、その取引を経て販売された商品が「フェアトレード商品」である。フェアトレード商品の購入は、その性格から倫理的消費行動あるいは社会的消費行動のひとつとして考えることができる。DFID(英国国際開発省)によれば、イギリスでのフェアトレード商品の購入は、性別、所得、学歴、そして政治関心の高さに規定されるとされる。また近年では、環境配慮行動や健康配慮行動との結びつきも論じられる。

 本報告では第一に、調査の結果をもとに、日本におけるフェアトレード商品購入の実態を明らかにする。そして第二に、フェアトレード商品の購入を目的変数としたロジスティック回帰分析をおこない、その規定要因を明らかにする。この分析では、諸属性をはじめとして社会意識、政治関心、公共意識、環境配慮行動、健康配慮行動、消費態度に関する変数を説明変数として用いる。

 分析の結果明らかになるのは、フェアトレード商品の購入をもっとも強く規定しているのは環境配慮行動と性別(女性であること)であるということである。さらに、政治関心や公共意識よりもむしろ、個性志向やライフスタイル志向といった社会意識、消費態度が強く作用しているということも示される。

第2報告

食事と食卓をめぐる日常生活における恋愛と結婚の社会学

梅原 佐知子(実践学園高等学校)

 食事は、人間にとって、日常的で、普遍的な、きわめて重要な、社会的できごとである。人びとが食事をとることは、さまざまな人間、田畑や土地、道具、天候、自然、社会などの影響を受けている。

 大久保孝治は、「生活を構造化している力には三種類ある。身体の生理的なリズム、自分の意志、社会の要請」と述べている。食事は、自分の意志で、減量を行う、一定の時刻に家族全員で一緒にとる、個々の仕事などの都合に合わせたり、学校給食の時間などに合わせる。

 自分の食事記録や先行研究におけるメアリー・ダグラス他のイギリス人の食生活の構造分析に基づき、論証する。また、大学生のアンケート調査の実態結果、自国で暮らすイギリス人8名のインタビュー質的調査、また、新聞、雑誌より、実証的にアプローチ検証を行う。

 現代社会において、孤族のような独居の人びとの増加に伴い、独居、親や友人などと、同居している独身の男性・女性たちが、友人、恋人、親族などと、どのような食事形態をとり、食卓を一緒に囲んでいるのか。未婚の男性・女性が、だれと、どのように、いつ、何を、どこで食事をとるかなど、先行研究、データアーカイブにおいて、構造分析を行う。  

 日常生活において、独身の男性・女性が、食事を一緒に行うことがきっかけとなり、どうすれば、二人の関係や愛情が深まり、一つ屋根の下で、二人以上のユニットが築け、幸福な日常生活を送ることができるかをテーマとする。

第3報告

感情のジェンダー化――近代日本における「少女」期を事例として

渡部 周子(千葉大学)

本報告は、国民国家形成の意図のもとで、「少女」の感情がどのように位置づけられたのか考察するものである。

近代日本の女子教育において、「良妻賢母」主義が根幹となるイデオロギーであることは、従来指摘されているところである。だが仮に賢い女性を育成することができたとしても、彼女が自身の能力を国家の利益のために活用しなければ、国家の繁栄につながらない。国の命に忠実な心を備えた女性国民を育成することが必要であり、人格形成期にある「少女」の心をどのように教育するかという問題は、国家にとって重要な課題であったと考えられる。

近代国家形成期である明治期において、医科学は「少女」の心をどのように規定したのか、また教育界は医科学の理論をどのように受容したのかについて、本報告は着目する。女性の心身に対する医科学の見解としては、私立大日本婦人衛生会の機関誌である『婦人衛生会雑誌』(1888年2月創刊。1893年4月より『婦人衛生雑誌』と改題)を、ならびに教育家等による女子教育論を科学思想の受容という視点から考察する。

女性の心身の管理を目的とする医科学の理論と、教育界におけるその受容を有機的に分析することで、近代日本におけるジェンダー秩序の形成の一端を解明する。